医療機関での電子処方箋普及に向けた政府の取り組みと未来

2025/5/19

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はじめに

近年、日本の医療現場ではデジタル化が急速に進展しており、その一環として電子処方箋が導入されました。電子処方箋は、従来の紙の処方箋に代わり、オンラインで処方箋情報をやり取りする仕組みです。この革新的なシステムは、医療の質向上、患者の利便性向上、医療従事者の負担軽減など、多くのメリットをもたらすと期待されています。 本稿では、日本の電子処方箋の現状と課題、そして未来について詳しく解説していきます。


電子処方箋とは

電子処方箋とは、2023年1月より運用が開始された、オンライン資格確認システムを基盤とした「電子処方箋管理サービス」を通して、医師と薬剤師間で処方箋を電子的にやり取りする仕組みです。 従来の紙の処方箋と同様に、患者は医療機関を受診し、医師の診察を受けます。医師は処方箋の内容を電子処方箋管理サービスに登録し、患者には電子処方箋の控え(紙またはアプリ)が交付されます。患者は、その控えを薬局に提示することで、薬剤師が電子処方箋管理サービスから処方箋の内容を取得し、調剤を行います。  


電子処方箋の仕組み

電子処方箋は、以下の手順で運用されます。  

  1. 患者が医療機関を受診し、「電子処方箋の発行」を希望します。

  2. 医療機関において医師が、オンライン資格確認等システムの中に設けられる【電子処方箋管理サービス】に「処方箋内容を登録」します。

  3. 医療機関は患者に「電子処方箋の控え」(紙、アプリ)を交付します。

  4. 患者が薬局を受診し、「電子処方箋の控え」を提示します。

  5. 薬局において、薬剤師が【電子処方箋管理サービス】から「処方箋内容」を取得し、調剤を行います。

  6. 患者に薬剤を交付します。


電子処方箋のメリット

電子処方箋の導入により、患者、医療機関、薬局それぞれに多くのメリットがあるとされています。

患者側のメリット

  • 薬剤情報の安全性向上: 複数の医療機関を受診している場合でも、薬剤師が患者の処方情報や調剤情報を正確に確認できるため、重複投薬や飲み合わせの悪い薬の処方を防ぐことができます。  

  • 待ち時間の短縮: 薬局を訪れる前に、患者が電子処方箋の引換番号を薬局に伝えることで、薬局での待ち時間を短縮できます。  

  • 処方履歴の確認: マイナポータル等で、自分が服用している薬を確認できます。  

  • オンライン診療・在宅医療の利用促進: 電子処方箋の活用により、オンライン診療や在宅医療が利用しやすくなることが期待されています。 電子処方箋によって、医療機関と薬局間で患者の薬剤情報をやり取りできるため、薬局は処方箋がなくても薬の調合が可能になります。また、患者が薬局にわざわざ処方箋を持っていく必要がなくなるため、医師が患者宅を訪問する際に、服薬指導や薬の受け渡しができるようになります。  

医療機関側のメリット

  • 処方箋発行の効率化: 電子処方箋管理サービス側で処方箋の記載内容に不備がないかチェックされるため、形式的な不備による問い合わせ件数の削減が期待できます。 また、医師が患者の薬剤情報を確認し、重複投薬や併用禁忌のチェックを実施した上で処方箋を発行することができます。  

  • 業務負担の軽減: 調剤情報の入力や紙の処方箋の保管など、医療従事者の業務負担が軽減されます。  

  • 医療安全の向上: 医療機関・薬局を跨いだ処方・調剤情報の共有、重複投薬や併用禁忌薬のチェックにより、医療の安全性が向上します。  

薬局側のメリット

  • 調剤業務の効率化: 電子処方箋管理サービスから処方箋のデータを取り込むため、処方内容を手入力する作業負荷が軽減されるとともに、入力ミスの軽減が期待できます。  

  • 保管スペースの削減: 紙の処方箋を物理的に保管する必要がなくなり、保管スペースの確保やファイリング作業が不要になります。  

  • 患者とのコミュニケーション向上: 電子処方箋により、薬剤師は患者の薬歴やアレルギー情報などを容易に確認できるようになり、患者とのコミュニケーションを円滑に進めることができます。


電子処方箋の課題

電子処方箋は多くのメリットをもたらす一方で、導入・運用にはいくつかの課題も存在します。

医療機関側の課題

  • 導入コスト: システム導入にかかる費用や運用に伴う手間、電子カルテなどの既存システムとの連携などが課題となっています。 特に、地域密着型の小規模な診療所では、コスト面が大きな負担となる可能性があります。  

  • 運用体制の整備: 電子処方箋に対応するシステムの整備、医療スタッフの研修、セキュリティ対策など、運用体制の整備が必要です。  

  • デジタルリテラシー: 医療スタッフのデジタル技術への習熟度が低い場合、導入や運用に支障をきたす可能性があります。  

薬局側の課題

  • 業務フローの変更: 現在の薬局の業務フローは、紙媒体の処方箋を想定したものが多く、電子処方箋への対応には、業務フローの見直しや、調剤室内のインフラ整備などが必要となります。  

  • システム改修: オンライン資格確認等システムの導入以後、ベンダーによる機器の改修が次々と必要になっていますが、様々な要因により改修対応が追い付いておらず、スケジュール的にも余裕がないのが現状です。  

その他の課題

  • 地域格差: 都市部では電子処方箋の導入が進んでいる一方で、地方では導入が遅れている現状があります。  

  • 個人情報保護: 患者さまの個人情報や健康データの漏洩リスクへの対策が重要となります。  

  • システムの安定性: システムのダウンタイムや不具合発生時の対応など、安定的な運用が求められます。  


電子処方箋の普及状況

2025年3月末時点で、電子処方箋システムを導入している医療機関は全体の約1割に留まると予測されています。 一方で、薬局では導入が進んでおり、2025年夏頃には、ほぼすべての薬局で電子処方箋システムが導入される見込みです。  


政府の取り組みと支援

政府は、電子処方箋の普及を促進するため、様々な取り組みを行っています。

  • 補助金制度: 電子処方箋システム導入を支援するため、医療機関・薬局に対して補助金制度を設けています。  

  • 情報提供: 電子処方箋のメリットや導入方法など、医療機関・薬局向けに情報提供を行っています。

  • 法整備: 電子処方箋の利用を促進するため、関連法規の整備を進めています。

2024年度診療報酬改定では、「医療DX推進体制整備加算」が新設され、その施設基準として「電子処方箋により処方箋を発行できる体制を有していること」が求められています。 


 

電子処方箋の未来

電子処方箋の導入は、医療現場のデジタル化を加速させ、医療の質向上、患者の利便性向上、医療従事者の負担軽減に貢献すると期待されています。 将来的には、救急車に電子処方箋システムが搭載されることで、救急時の搬送・受入などがよりスムーズに行われるようになる可能性も示唆されています。 また、マイナポータルと連携した電子版お薬手帳アプリや健康管理アプリなどが普及することで、処方情報や調剤情報の活用が促進され、患者自身の健康管理にも役立つと考えられています。 


まとめ

電子処方箋は、日本の医療システムに大きな変革をもたらす可能性を秘めたシステムです。 多くのメリットがある一方で、導入・運用には課題も存在し、特に医療機関側の導入が遅れている現状は深刻です。 政府は、補助金制度や情報提供など、普及促進に向けた取り組みを強化していく必要があります。 また、医療機関・薬局は、それぞれの課題を克服し、電子処方箋を積極的に活用することで、患者に質の高い医療サービスを提供していくことが重要です。



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