

- はじめに
- なぜ面会対応はこれほどまでに大変なのか?現場を疲弊させる「見えない負担」
- 1.終わらない電話連絡と「言った・言わない」問題
- 2.複雑化する面会ルールと、際限のない個別対応
- 3.紙ベースの手続きが引き起こす、情報共有の分断
- 4.多様化する家族背景と、多職種連携の難しさ
- 「あの人がいるから何とかなる」の限界。旧来型オペレーションが招く負のスパイラル
- 1.業務の属人化が引き起こす「ブラックボックス」というリスク
- 2.職員の疲弊が招く、対応品質の低下と満足度の悪循環
- 3.本来のコア業務を圧迫する「時間泥棒」という見えないコスト
- DXで効率化する、これからの面会オペレーション
- 1.情報の一元化:問い合わせを減らす「ポータルサイト」
- 2.連絡手段の最適化:電話依存から脱却するコミュニケーションツール
- 3.手続きのオンライン化:場所と時間を選ばない柔軟な仕組み作り
- 未来を見据えて:スムーズな面会対応がもたらす、医療の質向上
- 1.業務効率化が生み出す「時間」という、最も価値ある資源
- 2.患者・家族満足度の向上と「選ばれる病院」への一歩
- 3.職員が働きがいを感じられる、持続可能な職場環境の実現
- まとめ:面会業務の改善は、未来の病院への投資
はじめに
2020年から2023年にかけて続いたパンデミックを経て、医療機関における面会のあり方は大きく変わりました。一時は原則禁止という厳しい措置が取られましたが、社会が平時を取り戻しつつある今、多くの施設で面会制限が緩和されています。患者さんとご家族が顔を合わせる時間は、療養生活における何よりの支えであり、その機会が戻ってきたことは喜ばしいことでしょう。
しかしその一方で、医療現場からはこんな声も聞こえてきます。「面会制限は緩和されたのに、現場の負担感はなぜか減らない…」。
それもそのはずです。「面会対応」の裏には、ひっきりなしにかかってくる問い合わせの電話、複雑なルールの案内、来院時の書類記入、そしてキーパーソンへの状況説明や面談調整など、実に多岐にわたる業務が隠されています。これらは一つひとつは小さなタスクでも、積み重なることで確実に現場の時間を奪い、職員を疲弊させているのではないでしょうか。
この記事では、多くの医療機関が抱えるこの「見えない負担」の正体を突き止め、DXによっていかにして解決できるのか、その具体的な糸口を探っていきます。
なぜ面会対応はこれほどまでに大変なのか?現場を疲弊させる「見えない負担」
面会対応の業務負担は、単に「忙しい」という一言では片付けられない、構造的な課題をはらんでいます。まずは、多くの現場で共通して見られる4つの負担について、解像度を上げて見ていきましょう。
1.終わらない電話連絡と「言った・言わない」問題
「〇〇さんのキーパーソンに、今日の検査結果の件で連絡しないと…」「また留守番電話だ…」。こうした電話連絡は、医療現場の日常風景かもしれません。しかし、相手の都合の良い時間に合わせて何度も電話をかけ直す手間、口頭での説明に伴う伝達漏れや聞き間違いのリスクは、決して無視できません。 記録に残りにくい電話でのやり取りは、後になって「言った・言わない」のトラブルに発展することも。その対応に、さらに多くの時間が割かれてしまうという経験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
2.複雑化する面会ルールと、際限のない個別対応
感染症の状況に応じて、面会可能な人数、時間、場所などのルールは、今もなお流動的です。その都度、最新のルールを正確に、分かりやすくご家族に説明するのは骨の折れる作業です。 さらに、「うちだけは少し長く…」「どうしてもこの時間で…」といった個別要望への対応も、現場の頭を悩ませる一因でしょう。ご家族のお気持ちを汲み取りたいという思いと、ルールを守らなければならないという使命感の板挟みになり、丁寧にお断りすることで心理的な負担を感じる。こうしたクレーム対応に近い状況も少なくないと感じます。
3.紙ベースの手続きが引き起こす、情報共有の分断
多くの病院では、いまだに紙の面会簿や面会カードへの記入が主流です。しかし、その管理や保管には手間がかかりますし、過去の面会履歴をすぐに参照することも困難です。 また、ご家族から受け取った同意書が事務スタッフのもとにあり、病棟の看護師がその内容を把握していない、といった部署間の情報分断も起こる可能性があります。リアルタイムで情報が共有されないことは、些細な確認の手間を増やし、業務全体の流れを滞らせる原因となります。
4.多様化する家族背景と、多職種連携の難しさ
キーパーソンがご高齢であったり、遠方に住んでいたり。あるいは、キーパーソンが複数名いて、それぞれに同じ説明をしなければならないケースも増えています。こうした多様化する家族の形は、連絡・調整業務をより一層複雑なものにしています。 地域のケアマネージャーや後見人といった院外の専門職との連携(多職種連携)が不可欠な場合も多く、その調整にかかるコストも、現場の見えない負担として重くのしかかっているのが現状でしょう。
「あの人がいるから何とかなる」の限界。旧来型オペレーションが招く負のスパイラル
ここまで見てきたような負担に対し、多くの現場は個々の職員の「頑張り」や「丁寧さ」で乗り越えてきた側面が大きいように思います。しかし、その旧来型のオペレーションは、もはや限界に達しているのかもしれません。
1.業務の属人化が引き起こす「ブラックボックス」というリスク
「面会のことなら、受付の〇〇さんに聞けば全部わかる」。そんな、特定のベテラン職員のスキルや経験則に依存した運用になっていませんか?これは一見、効率的に見えますが、その業務は完全に「ブラックボックス」化しています。もしその職員が休んだり、退職してしまったりすれば、途端に業務が滞り、院内に混乱を招くリスクを常に抱えている状態だと言えるでしょう。
2.職員の疲弊が招く、対応品質の低下と満足度の悪循環
過大な面会対応の業務負担は、職員の心身を確実に疲弊させます。疲弊は、集中力の低下やコミュニケーションの質の低下を招きかねません。職員自身に悪気はなくても、無意識のうちに対応が事務的になったり、説明が不十分になったりすることで、患者さんやご家族に不満を抱かせてしまう。その結果、患者・家族の不満が新たな問い合わせやクレームを生み、職員がさらに疲弊する——誰にとっても不幸な悪循環に陥ります。
3.本来のコア業務を圧迫する「時間泥棒」という見えないコスト
最も深刻なのは、面会対応に費やされる時間が、医療従事者が本来注力すべきコア業務を圧迫しているという事実です。患者さんと向き合い、ケアの質を高めるための時間。チームでカンファレンスを行い、より良い治療方針を検討するための時間。それらの貴重な時間が、「時間泥棒」とも言える非効率な業務によって、静かに奪われ続けているのです。
DXで効率化する、これからの面会オペレーション
「DX」と聞くと、何か大掛かりで難しいものに聞こえるかもしれません。しかし、面会対応におけるDXとは、要するに「これまで当たり前だと思っていた非効率な業務プロセスを見直し、デジタル技術で賢く仕組み化すること」です。3つの視点から、その可能性を探ってみましょう。
1.情報の一元化:問い合わせを減らす「ポータルサイト」
まず取り組むべきは、問い合わせを受ける前に、ご家族が自分で情報を確認できる「入り口」を用意することです。病院のホームページ上に、最新の面会ルールやよくある質問(FAQ)をまとめた「面会のご案内」ページを設ける。いわば、情報のポータルサイト化です。これにより、同じ説明を何度も繰り返す手間が大幅に削減できます。
2.連絡手段の最適化:電話依存から脱却するコミュニケーションツール
キーパーソンに連絡がつかない問題の解決には、連絡手段そのものを見直すことが必要です。電話は即時性が高い反面、相手の時間を束縛し、記録に残らないという弱点があります。そこで、セキュリティ基準を満たしたチャットツールやSMS連絡ツールなどを活用し、連絡手段をテキストベースに移行するのです。これにより、職員は自分のタイミングで返信でき、やり取りの記録も正確に残るため、「言った・言わない」のトラブルを防ぐことにも繋がります。
3.手続きのオンライン化:場所と時間を選ばない柔軟な仕組み作り
面会手続きの簡素化の切り札は、オンライン化です。来院時の面会申込や各種同意書の記入を、スマートフォンやPCから行えるWebフォームに置き換える。これだけで、窓口での待ち時間や職員の事務作業は劇的に削減されます。ご家族にとっても、病院へ向かう電車の中など、好きな時間・場所で手続きを済ませられるメリットは計り知れないでしょう。

未来を見据えて:スムーズな面会対応がもたらす、医療の質向上
面会対応のDX化は、単なる業務効率化に留まりません。その先には、医療の質そのものを向上させる、大きな価値が待っています。
1.業務効率化が生み出す「時間」という、最も価値ある資源
もし、これまで面会対応にかけていた時間が、1日あたり30分でも削減できたとしたら、その時間を何に使えるでしょうか。患者さんのベッドサイドでじっくり話を聞く時間。スタッフ同士でケアについて深く議論するカンファレンスの時間。新しい知識を学ぶ自己研鑽の時間。効率化によって生み出される「時間」という資源は、医療の質を向上させるための最も価値ある原資となるのです。
2.患者・家族満足度の向上と「選ばれる病院」への一歩
スムーズで分かりやすい面会体験は、患者さんやご家族の満足度(PX:Patient Experience)を大きく左右します。「あの病院は、いつでもスマホで面会の登録ができてスムーズだった」。そんな心地よい体験は、病院そのものへの信頼と評価に直結します。質の高い医療が当たり前となった時代、こうした体験価値こそが、地域住民から「選ばれる病院」になるための重要な要素となるでしょう。
3.職員が働きがいを感じられる、持続可能な職場環境の実現
そして何より、無駄な業務や理不尽なストレスから解放されることは、職員の働きがい、ES(Employee Satisfaction)に大きく貢献します。職員が「この病院は、私たちの働きやすさを考えてくれている」と感じられること。それが、仕事へのエンゲージメントを高め、ひいては離職率の低下や優秀な人材の確保にも繋がる、持続可能な職場環境の礎となるはずです。
まとめ:面会業務の改善は、未来の病院への投資
本記事では、多くの医療機関が直面する「面会対応」の業務負担について、その構造的な課題とDXによる解決策、そしてその先にある未来像を考察してきました。
終わらない電話連絡、複雑なルール説明、煩雑な紙の手続き…。これらは、決して個々の職員の能力や努力の問題ではなく、旧来のオペレーションそのものに起因する課題です。
DXは、その根深い課題を解決し、職員と患者・家族の双方にとって、より良い関係性を築くための強力なツールとなり得ます。完璧なシステムをいきなり導入する必要はありません。まずは自院の業務プロセスを改めて見つめ直し、「どこに一番のボトルネックがあるのか」をチームで話し合うことから始めてみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、未来の医療現場を大きく変えるきっかけになるかもしれません。

Dr.JOY株式会社 スマート面会事業部 カスタマーサクセス
須磨
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