

- はじめに
- コロナ禍を経てなぜ?病院で面会制限が続く医学的・構造的な理由
- 1.院内感染防止は何よりも優先されるべき課題
- 2.新型コロナだけではない、多様な感染症への警戒
- 3.医療従事者の負担軽減との関連性
- 4.病院の機能や状況による判断基準の違い
- 面会制限が患者・家族・医療従事者にもたらす影響
- 1.患者さんが抱える心理的・身体的な影響
- 2.ご家族の不安や情報格差による負担
- 3.医療従事者のコミュニケーション上の課題
- 新しいコミュニケーションの模索と医療DXが拓く可能性
- 1.入退館手続きを自動化し、スムーズな面会を実現
- 2.面会情報を一元管理し、家族・医療者双方に安心を
- 3.看護業務の効率化とケアの質向上へ
- 4.DXが支える「つながり」と「効率化」
- まとめ
はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の事態は、私たちの生活様式だけでなく、医療のあり方、特に病院における人と人との繋がり方にも大きな変化をもたらしました。その中でも、多くの病院で実施された「面会制限」は、患者さんはもちろん、ご家族にとっても、そして医療従事者にとっても、非常に辛い判断や状況を生んだことと思います。「新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、感染症法上の位置づけも変更されるなど、社会全体で日常を取り戻そうとする動きが進む中でも、なぜまだ面会が自由にできない病院が多いのだろうか?」――そんな疑問や戸惑いを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
面会制限が続いている理由は何なのか、そしてこの状況は病院やそこで過ごす人々にどのような影響を与えているのか。さらに、こうした課題に対し、医療DXがどのような新しいコミュニケーションの形を提案できるのかについて、今回は医療現場の視点も交えながら掘り下げていきたいと思います。
コロナ禍を経てなぜ?病院で面会制限が続く医学的・構造的な理由
新型コロナウイルスの感染者数が減少傾向となり、社会全体で日常を取り戻そうとする動きが進む中でも、多くの病院では依然として面会に制限を設けています。その背景には、新型コロナウイルス感染症だけでなく、病院という場所特有の医学的、そして構造的な理由が存在します。
1.院内感染防止は何よりも優先されるべき課題
病院には、免疫力が低下した方や重篤な疾患を抱える方が多く入院されています。そのため、外部からのウイルスや細菌の持ち込みは、患者さんの命に関わる重大なリスクとなり得ます。新型コロナウイルスが落ち着いたとしても、インフルエンザやノロウイルス、その他の様々な感染症が常に存在しており、これらが院内でクラスターを発生させると、医療提供体制そのものが危機に瀕する可能性があります。面会制限は、このようなリスクを可能な限り排除し、患者さんを感染から守るための、いわば「最後の砦」として機能している側面があるのです。私も医療現場で働いていた経験から、院内感染が発生した際の混乱や、患者さんの安全を守ることの重みを肌で感じており、この点における病院側の慎重な姿勢は理解できるところです。
2.新型コロナだけではない、多様な感染症への警戒
コロナ禍での経験から、私たちは新しい感染症がいかに急速に広がり、医療現場に負荷をかけるかを学びました。しかし、病院が警戒すべきは新型コロナウイルスだけではありません。季節性インフルエンザやRSウイルス、あるいは薬剤耐性菌など、常に様々な感染リスクが存在します。面会者が外部からこれらの病原体を無意識のうちに持ち込んでしまう可能性はゼロではありません。特に、風邪のような軽い症状でも、免疫力が低下している患者さんにとっては大きな脅威となり得ます。こうした多様な感染リスクへの継続的な警戒が、面会制限を続ける理由の一つと言えるでしょう。
3.医療従事者の負担軽減との関連性
面会制限は、感染対策の一環であると同時に、医療従事者の負担軽減にも繋がる場合があります。面会者の健康状態の確認、面会場所への案内、感染対策に関する説明、そして日々寄せられる面会に関する問い合わせ対応など、面会を受け入れるためには少なからず医療従事者の時間と労力が必要となります。特に、来院された方への繰り返し同じ説明を行うことなどは、定型的でありながらも多くの時間を取られがちな業務です。 慢性的な人手不足に悩む多くの病院において、こうした面会対応にかかる煩雑な手続きや問い合わせ対応といった負担を軽減することが、結果としてより多くの時間を患者さんのケアに充てることに繋がる、と考えている病院もあるかもしれません。もちろん、これは患者さんとご家族の繋がりを軽視しているわけではなく、限られたリソースの中で最善を尽くすための苦渋の選択であると私は感じています。
4.病院の機能や状況による判断基準の違い
一口に「病院」と言っても、その機能や規模、入院している患者さんの特性は様々です。高度急性期病院、回復期リハビリテーション病院、慢性期病院など、それぞれで求められる感染対策のレベルや、患者さんの状態も異なります。また、病院の建物の構造やスタッフ体制によっても、面会者を受け入れられる体制は変わってきます。そのため、面会制限の基準や緩和の度合いは、病院ごとに異なっているのが現状です。「なぜあの病院は面会できるのに、うちの病院はダメなんだろう?」といった疑問も生まれるかもしれませんが、それぞれの病院が、自院の状況や患者さんの安全を最優先に考えて判断している結果なのです。
面会制限が患者・家族・医療従事者にもたらす影響
面会制限が続くことで、院内感染リスクを低減できる一方で、患者さんやご家族、そして医療従事者には様々な影響が出ています。ここでは、それぞれの立場から感じられる影響について考えてみたいと思います。
1.患者さんが抱える心理的・身体的な影響
入院という非日常的な状況に加え、愛する家族や友人に会えないことは、患者さんにとって非常に大きな精神的な負担となります。話し相手がいないことによる孤独感、病状や治療に対する不安を共有できないことによる焦燥感は、想像に難くありません。特に、長期入院の患者さんや、高齢でコミュニケーションが難しい患者さんの場合、ご家族との面会が唯一の心の支えであったり、病状や気持ちの変化をご家族に伝える大切な機会であったりします。面会が制限されることで、こうした精神的な安定が損なわれ、回復にも影響が出てしまう可能性も考えられます。多くの医療従事者から、面会制限によって患者さんの活気が失われたり、精神的に不安定になったりするといった声が聞かれます。これは、患者さんのQOL(生活の質)に大きく影響を及ぼすことが、複数の調査や研究でも示唆されています。
2.ご家族の不安や情報格差による負担
離れて暮らす家族が入院しているとなれば、ご家族の心配は尽きません。面会ができないことで、患者さんの顔を見て状態を直接確認したり、医療従事者から詳しく話を聞いたりする機会が失われます。電話でのやり取りだけでは伝えきれないニュアンスや、患者さんの表情から読み取れる情報など、対面でなければ得られないものは多くあります。これにより、ご家族は患者さんの状況を十分に把握できないことによる不安や、情報格差による負担を感じやすくなります。また、遠方に住んでいるご家族の場合、わずかな面会機会のために時間や費用をかけて移動すること自体が難しくなり、さらに孤立感を深めてしまうケースもあるでしょう。
3.医療従事者のコミュニケーション上の課題
面会制限は、医療従事者と患者さん・ご家族間のコミュニケーションにも課題をもたらしています。本来であれば、ご家族と対面でじっくりと時間をかけて、病状の説明や治療方針の共有、患者さんの日頃の様子に関する情報交換などを行うのが理想です。しかし、面会が制限されると、電話や短いオンライン面会、あるいは限られた時間での対面面会といった形でコミュニケーションを取らざるを得なくなります。これにより、情報伝達の齟齬が生じたり、患者さんやご家族の些細な変化や悩みを見落としてしまったりするリスクが高まる可能性があります。医療従事者は、患者さんのケアに加え、こうしたコミュニケーションの課題にも対応する必要があり、業務負担の増加や精神的なストレスに繋がることも考えられます。

新しいコミュニケーションの模索と医療DXが拓く可能性
このように、コロナ禍を経て続く面会制限は、感染対策という重要な目的がある一方で、患者さん、ご家族、そして医療従事者に様々な課題をもたらしています。これらの課題を解決し、すべての人にとってより良い医療環境を整備していくためには、従来のやり方に囚われない新しいコミュニケーションの形を模索していく必要があります。そして、その鍵となるのが「医療DX」です。
1.入退館手続きを自動化し、スムーズな面会を実現
これまで病院の面会受付は、電話予約や紙での記録、窓口での確認など、多くの手作業に依存してきました。そのため、受付の待ち時間が長くなったり、確認作業に人手を取られたりすることが日常的に発生していました。医療DXを取り入れることで、面会のオンライン受付、来院者情報の自動登録、入館時の本人確認や体温チェックの自動化といった仕組みが可能になります。たとえば、家族はスマートフォンやPCから面会希望日時を事前に入力し、当日は電話番号を入力するだけで入館できるようになります。これにより、従来必要だった紙ベースの記録や、ナースステーションへの度重なる電話確認を省略することができ、スムーズで快適な面会体験が実現します。病院にとっては、来院者データを蓄積し活用できることで、セキュリティ面での安心感も高まります。
2.面会情報を一元管理し、家族・医療者双方に安心を
面会に関する情報は、来院履歴、参加した家族の関係性や頻度など、多岐にわたります。これらを従来のように紙や口頭で共有していると、記録の抜けや情報伝達の遅れが生じる可能性があります。そこで重要なのが、面会情報の一元管理システムです。これを導入すれば、看護師や医師は患者さんの最新の面会状況をすぐに確認でき、次回の面会予定や家族からの要望も把握しやすくなります。家族もまた、専用アプリやポータルを通じて「次の面会はいつなのか」といった情報をリアルタイムに確認できます。こうした仕組みは、ご家族に「病院ときちんとつながっている」という安心感をもたらすと同時に、医療従事者側にも「情報が漏れなく共有されている」という信頼を築きます。面会そのものが制限される時期でも、デジタル基盤があることで、情報格差を減らし、関係者全員が同じ視点で患者さんを見守れる体制が整うのです。
3.看護業務の効率化とケアの質向上へ
病院において、看護師が日々抱える業務には患者さんのケアだけでなく、電話対応や面会調整、来院時の聞き取り対応などの事務的作業が含まれます。これらの業務は定型的である一方、時間と労力を大きく奪う要因となっています。医療DXの導入によって、こうした定型的な事務作業の多くが自動化されれば、看護師は本来の役割である「患者さんに寄り添った看護」に専念できる時間を取り戻せます。看護師は患者さんの観察やケアにより多くの時間を割けるようになり、質の高い看護を提供できるようになります。また、家族からの質問や要望を事前にシステム上で受け取れる仕組みがあれば、現場での対応がスムーズになり、説明の抜けや情報共有の遅れを防ぐことにもつながります。効率化によって削減された業務時間は、そのまま「患者さんのために使える時間」となり、ケアの質の向上とスタッフの負担軽減を両立させることが可能です。
4.DXが支える「つながり」と「効率化」
医療DXの真価は、単に便利なシステムを導入することにとどまりません。それは、患者・家族・医療チームの三者をシームレスにつなぎ、時間や場所に縛られない新しい医療コミュニケーションの形をつくることです。入退館手続きが自動化されることで、病院のセキュリティと効率性が両立し、面会情報が一元管理されることで、ご家族の安心と現場のスムーズな連携が実現します。そして、看護業務の効率化によって確保された時間が、患者さん一人ひとりへのよりきめ細やかなケアへと還元されていきます。結果として、DXは病院全体に「業務効率化」「患者満足度向上」「スタッフの負担軽減」という三重の効果をもたらします。これからの病院運営において、DXは単なるオプションではなく、持続可能な医療を支える基盤となっていくでしょう。

まとめ
新型コロナウイルスの影響を経て、病院の面会制限は多くの場所で継続されています。これは、院内感染防止という揺るぎない理由に基づいた判断ですが、一方で患者さんやご家族、医療従事者には様々な心理的・物理的な影響をもたらしています。このような課題に対し、医療DXはオンライン面会システムや情報共有ツールの導入といった形で、新しいコミュニケーションの可能性を提示しています。これらのテクノロジーを活用することで、物理的な距離があっても心の繋がりを維持し、患者さんとご家族、医療従事者間の連携をより密接にすることが期待できるだけでなく、面会対応業務の一部自動化による病院側の負担軽減にも繋がります。コロナ禍での経験を無駄にせず、医療DXを積極的に推進していくことは、これからの病院が、感染対策と同時に患者さん中心の質の高い医療を提供していく上で、非常に重要な鍵となるでしょう。患者さんとご家族が安心して療養できる環境、そして医療従事者がより働きがいを感じられる環境を築くために、医療DXが果たす役割は今後ますます大きくなっていくと私は考えています。

Dr.JOY株式会社 スマート面会事業部 カスタマーサクセス
須磨
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