【実践編】疑義照会プロセスの質を高める!門前薬局との連携強化とトラブルシューティング・チェックリスト

2025/5/20


疑義照会は連携の「試金石」? 門前薬局とのスムーズなやり取りを目指して

医療の現場において、処方箋の内容について薬剤師が処方医に問い合わせるこのプロセスは、薬剤師法第24条に基づき薬剤師に課せられた法的義務であり 、患者安全確保の根幹をなすものです。また、照会に応じることは医師の責務でもあります 。特に、特定の医療機関に隣接する薬局(門前薬局)はもちろん、地域のかかりつけ薬局においても、医療機関との間で日常的に多くの処方箋に関するやり取りが発生します。この疑義照会をいかにスムーズに行うかが、連携の質、ひいては患者中心の医療提供体制において重要となります 。

しかし、この重要なプロセスにおいて、些細な認識の違いやコミュニケーション不足から、思わぬトラブルに発展してしまうケースも少なくないのが実情です。「忙しいから」「いつも通りだろう」といった油断が、患者さんへの影響はもちろん、医療機関と薬局間の信頼関係にもひびを入れてしまう可能性を秘めています。

この記事では、門前薬局との疑義照会におけるトラブルを未然に防ぎ、より質の高い連携を築くための具体的な方法について、実践的な視点から考えていきたいと思います。連携強化策からトラブル発生時の対応、そして日々の業務に役立つ「チェックリスト」まで、皆さまの現場ですぐに活かせるヒントが見つかれば幸いです。




なぜ行き違いが? 疑義照会でトラブルが起こりやすい背景

そもそも、なぜ医療機関と門前薬局の間で、疑義照会に関するトラブルが起きてしまうのでしょうか。いくつかの代表的な背景を探ってみましょう。


1. コミュニケーション不足と「思い込み」

最も多い原因の一つが、やはりコミュニケーションに関する問題です。「電話したけど担当の先生が不在だった」「FAXを送ったが見てもらえたか分からない」といった連絡の行き違いは日常茶飯事かもしれません。また、「いつもの処方だから大丈夫だろう」「この前の指示と同じはず」といった双方の「思い込み」が、確認不足を招き、結果として誤った情報伝達に繋がることもあります。これは、忙しい業務の中では特に起こりやすい落とし穴だと感じますね。


2. 忙しさからくる確認漏れや伝達ミス

医療機関も薬局も、日々の業務に追われていることがほとんどです。医師は診察や処置、薬剤師は調剤や服薬指導と、それぞれが多くのタスクを抱えています。このような状況下では、処方箋の記載内容に抜け漏れがあったり、疑義照会で確認した内容の記録が不十分になったり、あるいは口頭での伝達が正確でなかったりといったミスが発生しやすくなります。ヒューマンエラーを完全になくすことは難しいですが、そのリスクを認識しておくことは重要でしょう。関係者間での冷静な対話が必要ですが、一方的な非難を避け、問題点を具体的に共有し、認識の齟齬を確認する場(例:事例検討会)を設けることも有効です。

3. 医師と薬剤師の専門性や役割の違いに基づく視点の相違

医師は患者さんの病態全体を把握し、治療方針を決定する立場にあります。一方、薬剤師は処方された薬剤の専門家として、その用法・用量、相互作用、副作用などの観点から処方内容をチェックします。この立場の違いから、疑義照会に対する重要度や緊急性の認識にズレが生じることがあります。例えば、医師にとっては些細な変更でも、薬剤師にとっては重要な確認事項である、といったケースです。この「温度差」が、時としてコミュニケーションの壁になってしまうことがあるのではないでしょうか。




「かかりつけ連携」の第一歩!門前薬局との関係を深める連携強化策

では、こうしたトラブルを防ぎ、より良い連携を築くためには、具体的にどのようなことに取り組めば良いのでしょうか。いくつか具体的なアクションを提案します。


1. 顔の見える関係づくり:定期的な情報交換のすすめ

基本的なことですが、やはりお互いの「顔が見える関係」を築くことが連携の第一歩だと思います。日頃から挨拶を交わす、ちょっとした情報(例えば、院内の感染症の流行状況や、薬局での新しい取り組みなど)を共有するなど、些細なコミュニケーションの積み重ねが信頼関係の土台となります。可能であれば、月に一度でも、医療機関の担当者(医師、看護師、事務など)と薬局の管理薬剤師などが集まり、情報交換を行う場を設けるのは非常に有効でしょう。


2. 事前ルール決め:疑義照会の方法・時間帯・緊急度判断

疑義照会をスムーズに行うためには、事前にルールを決めておくことが重要です。

  • 連絡手段: 電話、FAX、それとも他のツール? 誰が誰に連絡するのか?

  • 対応時間: 何時から何時までなら比較的電話がつながりやすいか? 時間外の緊急連絡はどうするか?

  • 緊急度の判断基準: 患者さんの状態変化が疑われる場合や、ハイリスク薬に関する問い合わせなど、どのような場合に優先的に対応するか、共通認識を持っておく。

これらのルールを文書化し、院内・薬局内で周知徹底することで、「どうすればいいんだっけ?」という迷いを減らし、迅速な対応に繋がります。


3. 相互理解を促進:勉強会や合同研修の開催

お互いの業務や専門性への理解を深めることも、円滑な連携には欠かせません。例えば、医療機関側から新しい治療法やガイドラインについて情報提供したり、薬局側から新薬の情報や副作用の注意点などを共有したりする勉強会を合同で開催するのはいかがでしょうか。それぞれの専門性を尊重し、学び合う機会を持つことで、より建設的なコミュニケーションが可能になるはずです。これは、双方のスキルアップにも繋がり、結果的に患者さんへの医療の質向上に貢献する、非常に意義のある取り組みだと感じます。




もしトラブルが起きてしまったら?冷静に対応するためのステップ

どんなに注意していても、残念ながらトラブルが起きてしまう可能性はゼロではありません。万が一、問題が発生してしまった場合に、どのように対応すれば良いのでしょうか。

1. まずは事実確認:客観的な情報を整理する

感情的にならず、まずは、処方箋原本、診療録(カルテ)、調剤録、疑義照会時の記録(メモ等を含む)といった客観的な記録に基づき、時系列で事実関係を正確に把握することが重要です 。処方箋の記載内容、カルテの記録、薬局での調剤録、疑義照会の際のやり取りの記録(メモなどでも可)といった情報を集め、時系列で状況を整理しましょう。「言った」「言わない」の水掛け論を避けるためにも、特に、疑義照会の内容とその結果(変更の有無に関わらず)を処方箋の備考欄や薬歴に正確に記録することは、法的要件 を満たすだけでなく、後の検証や再発防止においても極めて重要です。


2. 円滑なコミュニケーション:感情的にならず対話を試みる

事実関係を整理した上で、関係者間で冷静に対話を行います。相手の立場や状況を考慮し、一方的に非難するような態度は避けましょう。問題点を具体的に伝え、双方の認識に齟齬がないかを確認しながら、解決策を探る姿勢が大切です。場合によっては、直接会って話す機会を設けることも有効かもしれません。


3. 原因分析と再発防止策:次に活かすための振り返り

問題が解決したら、それで終わりではありません。なぜ今回のトラブルが起きてしまったのか、その原因を分析し、具体的な再発防止策を検討することが不可欠です。「忙しかったから」で片付けず、コミュニケーションのルール、情報共有の方法、チェック体制など、改善すべき点がないかを具体的に洗い出しましょう。そして、その対策を関係者全員で共有し、実行に移すことが、将来の同様のトラブルを防ぐ鍵となります。




【実践ツール】連携強化とトラブル防止のためのチェックリスト

日々の業務の中で連携強化やトラブル防止の意識を維持するために、具体的なチェックリストを活用することをおすすめします。以下に項目例を挙げますが、ぜひ皆さまの現場の実情に合わせてカスタマイズしてみてください。


  • 連携体制チェックリスト

    [ ] 門前薬局の連絡先(電話、FAX、担当者名)は最新の情報に更新されているか?

    [ ] 緊急時の連絡方法や対応フローは明確に定められ、周知されているか?

    [ ] 疑義照会の基本的なルール(連絡手段、時間帯など)は共有されているか?

    [ ] 定期的な情報交換の機会(会議、簡単なミーティングなど)は設けられているか?

    「[ ] 疑義照会簡素化プロトコル等の事前取り決め事項は、関係者全員に周知され、適切に運用されているか? 」  

    「[ ] ハイリスク薬に関する疑義照会時の優先度や確認手順は明確か?」

    「[ ] 地域連携薬局等の認定要件や、地域の医療連携会議等で定められた連携ルールを把握しているか? 

  • 疑義照会時コミュニケーションチェックリスト

    [ ] (薬剤師→医師)問い合わせの要点は明確か?簡潔に伝えられているか?

    [ ] (薬剤師→医師)患者さんの状況(年齢、性別、症状など)を適切に伝えているか?

    [ ] (薬剤師→医師)提案や代替案がある場合は、具体的に提示できているか?

    [ ] (医師→薬剤師)回答内容は明確か?曖昧な表現になっていないか?

    [ ] (医師→薬剤師)変更点や指示内容は、後で確認できるよう記録に残したか?(メモ、カルテ記載など)

    [ ] 専門用語を使いすぎていないか?相手に分かりやすく伝える工夫をしているか?

    [ ] 回答が必要な場合、期限の目安を伝えているか(または確認しているか)?

  • トラブル発生時対応チェックリスト

    [ ] 発生した事象について、客観的な事実関係を記録したか?

    [ ] 関係者(院内、薬局内)に必要な報告を行ったか?

    [ ] 当事者間で冷静な対話の機会を持てたか?

    [ ] トラブルの原因分析を行ったか?

    [ ] 再発防止策を具体的に検討し、関係者間で共有したか?

これらのチェックリストを定期的に見直すことで、連携の「当たり前」のレベルを維持・向上させることができるでしょう。




未来への展望:ICTツール活用で、よりスムーズな連携は可能か?

これまで述べてきたような連携強化策は、地道な努力の積み重ねが基本となります。しかし近年、近年、ICT活用による医療機関・薬局間連携の効率化・確実性向上への期待が高まっています。しかし、特に電子処方箋システムにおいては、薬局での導入が進む(2025年初頭で約6割超 )一方で、医療機関側の導入は1割未満に留まっており 、本格的な普及には多くの課題が存在するのが現状です。

例えば、セキュアな環境でメッセージのやり取りができるビジネスチャットのようなツールを使えば、電話のように相手の時間を拘束することなく、都合の良いタイミングで情報を伝えたり、確認したりすることが可能になります。また、やり取りが記録として残るため、「言った言わない」のトラブル防止にも繋がるでしょう。

もちろん、ツールの導入にはコストや、運用ルールの整備、関係者への教育といった課題もあります。しかし、電話やFAXといった従来の方法が抱える課題(繋がらない、不達、記録が曖昧など)を補完し、よりスムーズで確実な情報共有を実現する手段として、こうした技術の活用も、今後の連携強化を考える上で有力な選択肢の一つになっていくのではないでしょうか。より効率的な情報共有やコミュニケーションに関心のある方は、医療機関・薬局間の連携を支援するツールの情報も参考にしてみてはいかがでしょうか。




まとめ:継続的な改善で、患者さんのためのより良い医療連携を

門前薬局とのスムーズな疑義照会は、単なる業務効率化の問題ではなく、患者さん中心の質の高い医療を提供する上で不可欠な要素です。日々のコミュニケーションを大切にし、「顔の見える関係」を築くこと、明確なルールを定めて運用すること、そして万が一のトラブルにも冷静かつ建設的に対応すること。これらを地道に実践し、継続的に改善していく姿勢が求められます。

今回ご紹介した連携強化策やチェックリストが、皆さまの医療機関と門前薬局とのより良い関係構築の一助となれば、これほど嬉しいことはありません。お互いを尊重し、協力し合うことで、患者さんにとって最善の医療を提供していくという共通の目標に向かって、共に歩んでいきましょう。


Dr.JOYのグループウェアのご紹介

医療現場向けに特化した院内SNSサービス
職場専用の連絡ツールとして運用して、
紙コストの削減と業務効率化を実現!

この記事をシェアする

ホーム業務効率化

【実践編】疑義照会プロセスの質を高める!...