「また在庫がない!」 医療現場を悩ませる医薬品欠品問題
「先生、あの患者さんの薬、また在庫がないそうです…」
「えっ、また? 代替品はすぐ手配できるの?」
医療現場の日常で、このような会話が聞かれることは珍しくなくなってしまったように感じます。医薬品の供給不安定化、いわゆる「欠品」問題は、患者さんの治療継続に影響を及ぼすだけでなく、医療従事者の業務負担増加や精神的なストレスにも繋がる、非常に悩ましい課題ですよね。必要な時に必要な薬が手に入らない状況は、本当に避けたいものです。
薬の安定供給は、医療の質と安全を守るための生命線と言っても過言ではありません。この課題に立ち向かう上で、実は非常に重要な役割を担っているのが、日々医療機関に医薬品を届けてくれる医薬品卸のMS(Marketing Specialist)さんたちなのです。
頼れるパートナー? 医薬品卸MSとの連携がカギを握る理由
MSさんは、単に注文された薬を届けるだけでなく、医薬品に関する様々な情報提供や、緊急時の供給調整など、多岐にわたる役割を担っています。昨今の供給不安の背景には、製造体制の問題や後発医薬品を中心とした急激な需要変動など、様々な要因が複雑に絡み合っていると言われています。こうした状況下で、MSさんとの良好な関係を築き、日々の連携を密にすることは、欠品リスクを少しでも低減し、万が一発生した場合にも迅速かつ適切に対応するために、これまで以上に重要になっているのではないでしょうか。
彼らは、担当エリアの医療機関の状況や、自社が扱う医薬品の供給状況について、私たちよりも詳しい情報を持っている場合が多いです。この「情報」をいかにうまく共有し、活用できるかが、円滑な医薬品管理の鍵を握ると言えるでしょう。
発注業務をスムーズに! MSとの連携テクニック
日々の発注業務は、医薬品管理の基本中の基本です。ここでのちょっとした工夫が、後々の「在庫がない!」を防ぐことに繋がるかもしれません。
「いつもの」発注から一歩進むために
「前回もこのくらいだったから」という経験則だけに頼った発注は、時に過剰在庫や欠品のリスクを高めます。可能であれば、院内の使用量データなどを基に、より客観的な需要予測を心がけたいところです。また、季節性のある薬剤(例えば、冬場のインフルエンザ治療薬など)や、特定の疾患キャンペーンなどで需要が変動しそうな薬剤については、少し早めにMSさんに相談し、在庫状況や納入見込みを確認しておくと安心でしょう。「念のため、〇〇の状況を教えていただけますか?」といった一言が、後々の安心に繋がるかもしれません。
発注システム利用時のちょっとしたコツ
多くの医療機関では、専用の発注システムを利用されていることと思います。システムは効率的ですが、入力ミスや送信漏れがないか、最終確認はやはり重要ですね。もし、発注システム上で「在庫僅少」や「納入不可」といった表示が出た場合は、そのまま放置せず、すぐにMSさんに電話などで直接確認することをお勧めします。システム上の表示と実際の在庫状況がタイムラグで異なる可能性もありますし、代替品の提案を受けられるかもしれません。
代替品の相談をするときのポイント
欠品が見込まれる場合、代替品の検討が必要になります。MSさんに相談する際は、「〇〇が欠品とのことですが、代替として推奨されるものはありますか?」「成分や規格が類似していて、現在供給が安定しているものは何でしょうか?」など、具体的に尋ねると、MSさんも的確な情報を探しやすくなります。また、院内で採用している医薬品リスト(フォーミュラリー)の情報を提供できれば、よりスムーズな代替品選定に繋がるでしょう。
突然の欠品! その時どう動く? MSとの効果的な連携
どんなに注意していても、予期せぬ欠品は起こり得ます。そんな時こそ、MSさんとの連携力が試される場面と言えるかもしれません。
欠品情報をいち早く掴むアンテナを張る
MSさんからの情報提供は、欠品を早期に察知するための重要な手がかりです。日頃からMSさんとのコミュニケーションチャネルを確保し、「何か供給に懸念がある薬剤はありませんか?」といった形で、こちらからも積極的に情報を求める姿勢が大切だと感じます。また、製薬企業のウェブサイトや業界ニュースなども、アンテナを張っておくべき情報源でしょう。
MSへの状況確認と代替品確保依頼の仕方
実際に欠品が発生、あるいはその可能性が高まった場合、まずはMSさんに連絡し、正確な状況(欠品の理由、回復の見込み、他社製品を含めた在庫状況など)を確認しましょう。その上で、「〇〇の代替品として、△△は確保できますか?」といった具体的な依頼を行います。この際、いつまでにどれくらいの量が必要なのかを明確に伝えることが重要です。緊急度が高い場合は、その旨もきちんと伝えましょう。
院内での情報共有と対応策の決定
MSさんから得た情報は、速やかに関係部署(医師、看護師、薬剤部など)に共有する必要があります。代替薬への切り替えが必要な場合は、院内の手順に則って速やかに検討・決定し、その結果をMSさんにもフィードバックすることで、スムーズな納品に繋がります。院内での迅速な意思決定プロセスも、欠品対応においては非常に重要ですね。
「知らなかった」を防ぐ! MSとの日頃の情報共有術
欠品への対応だけでなく、日々の業務を円滑に進めるためにも、MSさんとの情報共有は欠かせません。
定期的なコミュニケーションがもたらすメリット
忙しい業務の中ではありますが、可能な範囲でMSさんと定期的にコミュニケーションを取る時間を設けることは、非常に有益だと考えられます。訪問時や電話での短い会話でも構いません。「最近、何か変わった情報はありませんか?」といった問いかけから、思わぬ有益な情報が得られることもあります。こうした積み重ねが、いざという時の連携のスムーズさにも繋がるのではないでしょうか。
院内状況をMSに伝える際のポイント
院内で新規採用された薬剤や、使用量が大きく変動した薬剤などの情報があれば、MSさんにも伝えておくと良いでしょう。MSさんにとっては、今後の供給計画を立てる上で重要な情報となります。また、院内のフォーミュラリー変更や、特定の疾患に対する治療方針の変更なども、関連する薬剤があれば共有しておくと、より的確な情報提供を受けやすくなるはずです。
MSからの情報を院内で活かす工夫
MSさんは、新薬の情報、副作用に関する最新情報、関連学会の動向、他施設の事例など、様々な情報を持っています。これらの情報をただ受け取るだけでなく、院内の薬剤委員会や勉強会などで共有し、診療や業務改善に活かせないか検討する視点が大切です。MSさんを招いて、院内で説明会を開いてもらうといった方法も考えられますね。
【少し寄り道】MSさんとのより良い関係作りのヒント
少し話が逸れますが、MSさんも私たちと同じ人間です。良好な関係を築く上で、やはり基本的なコミュニケーションは大切ですよね。忙しい中でも、訪問時には「いつもありがとうございます」といった感謝の言葉を伝えたり、時には世間話を交えたりすることも、お互いの信頼関係を深める上で意外と効果があるように感じます。
また、MSさんの立場や、彼らが抱える供給調整の難しさなどを少しでも理解しようと努める姿勢も大切かもしれません。無理な要求ばかりするのではなく、時には譲歩したり、代替案を受け入れたりする柔軟性も、長い目で見れば良好な関係維持に繋がるのではないでしょうか。
情報伝達を効率化! デジタルツール活用の可能性
ここまでMSさんとの連携についてお話ししてきましたが、日々の情報共有や緊急時の連絡を、より効率的に行う方法はないだろうか、とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
電話やFAX以外の連絡手段を考える
従来の電話やFAXでの連絡は、確実な一方で、「担当者が不在で繋がらない」「送信したFAXが他の書類に紛れてしまった」「言った言わないの水掛け論になる」といった課題も聞かれます。特に緊急性の高い欠品情報などを確実に伝達・共有するには、少し心許ない場面もあるかもしれませんね。
複数MSとの情報共有をスムーズにするには?
多くの医療機関では、複数の医薬品卸とお取引があることでしょう。それぞれのMSさんと個別に連絡を取り合うのは、なかなか手間がかかる作業です。特に、欠品情報を複数のMSさんに一斉に問い合わせたい場合や、院内での決定事項を関係するMSさん全員に迅速かつ確実に伝えたい場合など、もっと効率的な方法があれば…と感じることはありませんか?
最近では、こうした医療現場の情報共有・コミュニケーションの課題解決を支援するデジタルツールも登場しています。例えば、セキュアなメッセージング機能や、関係者に一斉に情報を伝達できるようなツールを活用することで、電話連絡の削減、情報伝達の抜け漏れ防止、連絡履歴の可視化といったメリットが期待できるかもしれません。

まとめ:MSとの連携強化で、安定供給と業務効率化を目指そう
医薬品の欠品問題は、一朝一夕に解決できるものではありません。しかし、日々医療現場を支えてくれるMSさんとの連携を強化し、良好な関係を築くことで、その影響を最小限に抑え、乗り切っていくことは可能だと考えます。
今回ご紹介した、発注・欠品対応・情報共有における連携のポイントや、日々のコミュニケーションのヒントが、少しでも皆さまの業務のお役に立てれば幸いです。
そして、もし日々の情報共有や緊急連絡をもっと効率化したい、複数のMS担当者とスムーズに連携したい、といった課題を感じていらっしゃるのであれば、前述のような情報伝達を支援するツールの活用も検討してみてはいかがでしょうか。院内の状況に合わせて、最適なコミュニケーション方法を模索していくことが、これからの医薬品管理においてはますます重要になってくるでしょう。


Dr.JOY株式会社DS事業部 カスタマーサクセス
長友
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