はじめに
医師としての役割を担いながら、管理職としての責任も果たすことは、時間管理、多職種との連携、組織運営など、多岐にわたる業務を要するため、大きな負担となる可能性があります。診療に集中して患者のケアを行うことが主な職務である医師にとって、管理職としてスタッフのマネジメントや組織運営を行うのは、リーダーシップ、コミュニケーション能力、問題解決能力、組織運営能力といった、臨床業務とは異なるスキルが求められる場面です。特に「人間関係の調整」に関しては、医師としての業務をこなす傍ら、チーム内での立場の違いをうまく調整することが難しく感じられることが多いです。医師は、自身の臨床業務と並行して、看護師、事務職員など、異なる専門性を持つチームメンバー間の意見や業務の進め方の違いを調整する必要があり、そのバランスを取ることに困難を感じる場合があります。
この記事では、医師が管理職に就くことによる人間関係の難しさやチーム運営における苦労を具体的に紹介し、実際のエピソードを交えてその解決策について考えていきます。
医師としての臨床と管理職としてのギャップ
医師としては、日々の診療を通じて患者の命を預かる責任を感じながら仕事をしていますが、管理職に就くと、スタッフ全体の調整や施設全体の運営を考える立場に変わります。これにより、臨床の仕事とは異なる多くの課題に直面します。具体的には、スタッフのモチベーション維持、チームワークの醸成、業務効率の改善、医療安全の確保などが挙げられます。
厚生労働省が2022年に行った調査によれば、医師の年間時間外労働が960時間を超える割合は全体の21.2%、1920時間を超える医師が全体の3.7%に上ることが明らかになっています。このような過重労働の中で、管理職としての責務を果たすことは、医師にとって大きな負担となっています。2024年4月からは医師の働き方改革として時間外労働の上限規制が導入され、原則として年960時間、月100時間未満となっています。ただし、地域医療の確保や医師の育成といった特定の目的を持つ医療機関については、都道府県知事の指定を受けることで、上限が年1860時間まで緩和される場合があります(B水準・C水準)。
管理職としての役割では、スタッフの業務の調整や指導が求められますが、その過程で、職場のモチベーションやチームワークを維持するためには、人間関係の築き方が重要になります。医師は、患者ケアに集中したいという意向と、スタッフの指導や育成、組織運営といった管理職としての責任感の間で、難しいバランスを取る必要があります。
チーム内の人間関係における実際の苦労
管理職として特に苦労するのは、職場内での立場が異なる人々とのコミュニケーションです。医師、看護師、事務職員、それぞれの専門性や役割が異なるため、意見や仕事の進め方に食い違いが生じることは一般的です。医療現場では、医師は最善の治療を追求する一方で、看護師は患者の細やかなケアを重視し、事務職員は医療システムの効率化を図るなど、それぞれの専門性や立場から意見や優先順位の違いが生じることは一般的です。これらの職種間の視点や優先順位の違いを理解し、それぞれの専門性を尊重しながら協力体制を構築することが、質の高いチーム医療を提供する上で重要となります。
例えば、診療の優先度や進行の仕方に関して意見が食い違う場面があります。医師としては最善の治療を行うことに集中したい一方、看護師は患者ケアの細部に気を配り、事務職員は医療システムの効率化を図る必要があるため、視点や優先度が異なります。これらの違いをどう調整し、各職種間の協力を促進するかが鍵となります。
実際、ある医師管理職は、診療の進行をスムーズに行いたいと考えていた一方で、看護師側は患者の状態やケアの質に焦点を当てる必要があり、しばしば意見が対立したそうです。その中で、定期的なミーティングを設け、双方の意見を尊重しつつ、業務の優先順位を共有することで、少しずつ協力関係を築いていったというエピソードがあります。ある医師管理職は、診療の進行を重視する自身の考えと、患者の状態に応じたきめ細やかなケアを求める看護師との間で、優先順位の認識にずれが生じ、コミュニケーションに苦慮した経験があったと報告しています。

上司や部下との関係構築の苦労
医師として優れた技術や知識を持っていても、管理職としては上司や部下との信頼関係を築くことが非常に重要です。上司からは組織目標の達成を期待され、部下からは適切な指導とサポートを求められるため、医師管理職が双方の期待に応え、信頼関係を築くことは複雑な課題です。
一例として、ある医師管理職は、部下に対してどのようにフィードバックを行うべきかに悩んでいました。指導を厳しくしすぎると反発を招く可能性があるため、具体的な指摘は慎重に行い、プラスのフィードバックを意識的に増やすことで、部下との信頼関係を深めていったそうです。また、業務が忙しい中でも、定期的な1対1のミーティングを設け、部下の意見や悩みを聞くことで、問題を早期に解決し、スタッフのモチベーションを保つ努力をしていました。部下へのフィードバックを行う際、厳しすぎる指導は反発を招き、かといって曖昧な指摘では改善に繋がらないため、どのように伝えるべきか悩む医師管理職は少なくありません。具体的な改善点を指摘する際には、部下の能力や性格、状況などを考慮し、一方的な批判にならないよう、建設的なフィードバックを心がけることが重要です。
この医師管理職は、具体的な指摘を行う際には部下の感情に配慮しつつ、意識的に良い点を伝えることで、部下との信頼関係の構築に努めたとされています。多忙な業務の中であっても、定期的に部下と個別面談の機会を設け、業務の進捗状況だけでなく、悩みや意見を聞くことで、問題の早期発見と解決に努め、スタッフのモチベーション維持を図っていました。
職場でのコミュニケーション戦略
コミュニケーションの効果的な戦略を導入することで、チーム運営の質は大きく向上します。定期的なチームミーティングの実施、情報共有ツールの活用、オープンな意見交換の推奨など、効果的なコミュニケーション戦略を導入することで、チーム内の連携が強化され、業務効率や意思決定の質が向上する可能性があります。特に、定期的なフィードバックや情報共有の方法を工夫することが、医師管理職に求められるスキルです。特に、チーム内の状況を正確に把握するための傾聴力、異なる意見を調整するための交渉力、目標達成に向けてチームを導くリーダーシップなどが、医師管理職に求められる重要なスキルです。
出典
【公式】メディカルジャパン(医療・介護・薬局Week)健康分野の展示会イベント ー医師の働き方改革が2024年開始!罰則やタスクシフト/シェアについてわかりやすく解説 https://www.medical-jpn.jp/hub/ja-jp/blog/work.html
厚生労働省「医師の勤務実態について」 (2022年)
厚生労働省「医師の働き方改革の推進に関する検討会」資料 (2023年10月12日)

Dr.JOY株式会社DS事業部 カスタマーサクセス
長友
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