- はじめに
- 変わりゆく薬剤師の仕事
- 1. かつての“調剤メイン”から、地域に根ざした総合的サポートへ
- 2. オンライン服薬指導やチャットツールが当たり前の時代
- スキル1:コミュニケーション能力
- 1. 患者さんとの対話を円滑にするヒアリングスキル
- 2. 多職種とのやりとりをスムーズに進める協調力
- スキル2:ITリテラシー
- 1. オンライン服薬指導の基礎とメリット
- 2. 電子処方箋・電子薬歴の活用術
- 3. チャットツール・SNS活用で時間と場所を超える連携
- スキル3:多職種連携を促進する“つなぐ力”
- 1. チーム医療で求められる薬剤師の新しい立ち位置
- 2. 気軽なやりとりがイノベーションを生む
- <まとめ>これからの薬剤師像
- 1. 3つのスキルがもたらす相乗効果
- 2. 自分らしいスキルアップの方法
- 3. 次世代の薬剤師へ向けたメッセージ
はじめに
近年、薬剤師を取り巻く環境は大きく変化しています。高齢化の進行によって、在宅医療のニーズが高まる一方、新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン服薬指導の導入が急速に広まりました。
厚生労働省の資料によると、2022年時点でオンライン服薬指導を実施または導入予定の薬局は、全体の約20%に上るという報告もあり(※1)、今後もこの数字は増え続けるだろうとされています。
「調剤だけしていれば大丈夫」という時代ではもはやなく、患者さんの多様なニーズに応えながら、ITを活用した新しい働き方を模索する必要性が高まっているのです。
そこでこの記事では、「コミュニケーション能力」「ITリテラシー」「多職種連携を促進する“つなぐ力”」という3つのスキルに注目して、これからの薬剤師に求められるポイントをまとめてみました。私自身も、近所のかかりつけ薬剤師さんがオンラインで服薬指導をしていると聞いたときは、「そういう時代になったんだな」と驚きました。変化の波を上手に取り込み、患者さんとの距離を縮められるかどうかが、これからの薬剤師にとって重要になっていくと思います。
(※1)厚生労働省「令和4年調剤薬局業務の在り方に関する調査」より
変わりゆく薬剤師の仕事
1. かつての“調剤メイン”から、地域に根ざした総合的サポートへ
かつては「薬剤師といえば、患者さんから処方箋を受け取り、薬を調剤して渡す」というイメージが主流でした。しかし昨今は高齢化や在宅医療の普及に伴い、薬剤師に求められる業務が多様化しています。たとえば、患者さんのご自宅を訪問して服薬状況を確認したり、生活スタイルに合わせた飲みやすい形態の薬を提案したりする機会も増えています。
また、健康サポート薬局やかかりつけ薬剤師制度など、地域住民の“健康相談窓口”としての役割も重視されるようになりました。私自身も、近所の薬剤師さんに食事や睡眠のことなど、ちょっとした日常の相談をすることがありますが、親身に聞いてもらえると「地域で支え合っているんだな」と心強く感じます。
2. オンライン服薬指導やチャットツールが当たり前の時代
そして、コロナ禍で一気に加速したのがオンライン服薬指導です。以前は「直接顔を合わせずに薬を渡すなんて、本当に大丈夫なのか?」という声もありましたが、実際に導入が進むと、患者さんの移動負担を軽減したり、遠隔地の医療を支えたりと、多くのメリットが見えてきました。
あわせて、薬剤師同士や他職種とのコミュニケーション手段として、チャットツールやオンライン会議システムの活用が当たり前になりつつあります。これは時間や場所の制約を超えて、スムーズに連絡を取り合える大きな利点がありますよね。早いところでは、医師や看護師とのやりとりにもチャットを使っているケースがあり、処方内容の確認や患者さんの症状についてリアルタイムで情報共有する場面が増えているそうです。
スキル1:コミュニケーション能力
1. 患者さんとの対話を円滑にするヒアリングスキル
まず一つ目に欠かせないのが、患者さんやご家族とのコミュニケーション能力です。たとえば、薬の飲み忘れが多い患者さんに対しては、「なぜ飲み忘れてしまうのか」という背景を掘り下げ、生活スタイルや悩みを丁寧にヒアリングすることが大切になります。
「朝は忙しくてバタバタしてる」「食後に飲むのをうっかり忘れてしまう」など、ちょっとした日常の事情を深く知ることで、その人に合った服薬管理のコツを提案できます。言いにくそうな患者さんの気持ちを上手に引き出すには、“傾聴”と“共感”の姿勢がとても大切だと感じます。
2. 多職種とのやりとりをスムーズに進める協調力
また、多職種連携が進むいま、薬剤師同士はもちろん、医師・看護師・管理栄養士・ケアマネージャーなど多くの専門職と連携する機会が増えています。特に、オンライン会議やチャットでのやりとりでは、相手が見えにくいぶん、言葉遣いやタイミングに一層の配慮が必要になるでしょう。
たとえば、急ぎの依頼だけを一方的にチャットで送るのではなく、最初に一言「いつもありがとうございます」と声をかけるだけで、相手との関係がぐっとスムーズになることも少なくありません。こうした気配りの姿勢は、患者さんを含めたチーム医療全体の雰囲気を作るうえでも大切な要素です。

スキル2:ITリテラシー
1. オンライン服薬指導の基礎とメリット
二つ目は、ITリテラシーです。オンライン服薬指導は、コロナ禍の一時的な特例から一気に普及が進み、今では多くの薬局で導入が検討されています。患者さんの移動時間や待ち時間を減らし、感染リスクの低減にもつながるなど、メリットは大きいと言われています。
一方で、デバイスの使い方がわからない高齢者のサポートや、通信環境の整備など、運用上のハードルもあるのが現状です。薬剤師側が、カメラやマイクの調整、アプリの操作方法などを自分できちんと把握しておくことで、患者さんが戸惑うシーンを減らすことができます。
2. 電子処方箋・電子薬歴の活用術
オンライン服薬指導だけでなく、電子処方箋や電子薬歴といったデジタルツールの活用も、これからの薬剤師に欠かせない領域です。
たとえば、電子薬歴を使うと、患者さん一人ひとりの投薬履歴や副作用歴をスピーディーに確認でき、重複投与や飲み合わせの問題をより正確にチェックできます。また、事務作業にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、ルーチンワークの時間を削減する病院や薬局も増えています。単純作業が減れば、そのぶん患者さんとのコミュニケーションに時間を割けるというメリットがありますね。
3. チャットツール・SNS活用で時間と場所を超える連携
そして忘れてはならないのが、チャットツールやSNSの活用です。LINEや専用システムを用いれば、医師や看護師、他職種が集うグループチャットで処方内容や患者さんの状況をリアルタイムに共有できるようになります。
私の知り合いの薬剤師は、病院勤務時代に「ちょっと服薬指導で詰まっていることがあるから相談したい」というとき、いつでも医師にチャットでメッセージを送れる環境があったそうです。場所を選ばず、時間も短縮できるので、「多職種連携のハードルがぐっと下がった」と言っていました。
スキル3:多職種連携を促進する“つなぐ力”
1. チーム医療で求められる薬剤師の新しい立ち位置
三つ目のスキルとして挙げたいのが、多職種連携を促進する「つなぐ力」です。薬剤師は、処方箋の内容を確認するだけでなく、患者さんの生活背景や既往歴、さらには他科で処方されている薬剤情報まで総合的にチェックできる存在でもあります。だからこそ、医師や看護師とコミュニケーションを密にし、チームとして患者さんを支える視点が重要です。
「患者さんが体調のちょっとした変化を訴えていたら、主治医や訪問看護師に早めに共有する」「栄養面が気になるようなら管理栄養士につないでみる」といった具合に、さまざまな職種と患者さんをつなぐハブとして機能できると、医療の質がぐんと高まることでしょう。
2. 気軽なやりとりがイノベーションを生む
多職種連携というと、固い会議やカンファレンスを想像するかもしれませんが、実は“気軽なやりとり”がイノベーションのきっかけになったりします。チャットで「あれ、最近Aさんの血圧が高めなので、服薬状況確認したほうがいいかもしれません」などと声を掛け合ううちに、新たな気づきが生まれることもあるのです。
大きなトラブルやミスを防ぐためにも、普段からのこまめなコミュニケーションが不可欠だと思います。もちろん、医療者同士だけでなく、患者さんやそのご家族とのコミュニケーションも含めて、薬剤師が積極的に関わることで、チーム医療はさらに円滑に進むはずです。

<まとめ>これからの薬剤師像
1. 3つのスキルがもたらす相乗効果
ここまで、「コミュニケーション能力」「ITリテラシー」「多職種連携を促進する“つなぐ力”」の3つを紹介してきました。この3つが相互に補完し合うことで、患者さんにとってより安心できる医療環境が整うだけでなく、薬剤師自身の働きやすさややりがいも大きく高まると感じます。
ITリテラシーを高めることで、患者さんとのオンライン対話や多職種連携がスムーズになり、さらにコミュニケーション能力を磨けば、その分リレーションシップも深まりやすくなる――このように三位一体での相乗効果が期待できるわけですね。
2. 自分らしいスキルアップの方法
スキルアップにはいろいろなアプローチがあります。たとえば、自治体や各種学会が開催する研修やセミナーをチェックする、同僚や先輩薬剤師と情報交換の場をつくる、チャットツールを積極的に導入してみる…など、多岐にわたります。
IT関連であれば、意外と身近なSNSやオンライン動画で得られる知識もあるので、まずは興味を持って触れてみるところから始めてみてもいいかもしれません。自分ができることから一歩ずつ挑戦してみれば、いつの間にか患者さんやチームからの信頼が厚くなっていた、なんてことも大いにあり得ます。
3. 次世代の薬剤師へ向けたメッセージ
医療のデジタル化や患者さんのニーズ多様化が進むいま、薬剤師は単なる“調剤の専門家”にとどまらない存在になりつつあります。コミュニケーション力で患者さんの心を支え、ITリテラシーで業務を効率化し、多職種連携を促進することでチーム医療を動かす――これらが当たり前になればなるほど、薬剤師が活躍できるフィールドはますます広がっていくでしょう。
ぜひこれを機に、「やってみようかな」「ちょっと気になるな」というアクションを起こしてみてください。新しいスキルを身につけた薬剤師が増えれば増えるほど、患者さんはもちろん、地域医療全体にも大きなプラスがもたらされるはずです。

Dr.JOY株式会社DS事業部 カスタマーサクセス
長友
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