はじめに
近年、医療業界では「出荷調整」が深刻な問題となっています。厚生労働省の最新データによれば、2024年6月時点で全医療用医薬品の約22%(約3,800品目)が出荷調整または供給停止の状態にあると報告されています【厚生労働省 2024】。
必要な医薬品や医療材料が予定どおりに供給されないことで、病院や調剤薬局では混乱が生じ、患者さんの治療にも影響を及ぼしかねません。こうした状況は、“調整地獄”とも呼ばれ、企業の在庫管理や物流担当者にとって深刻な課題となっています。
なぜ出荷トラブルが頻発するのでしょうか。原因は多岐にわたり、需要の急増、原材料の供給不足、輸送網の混乱などが挙げられます。特に2020年以降、新型コロナウイルスの影響によるサプライチェーンの乱れが続き、ジェネリック医薬品メーカーの不祥事による供給停止も重なり、医薬品不足が長期化しています【厚生労働省 2023】。
こうした背景の中で、サプライチェーン管理を抜本的に見直す「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が注目されています。本記事では、出荷調整をめぐる課題や失敗例を整理しながら、最新のサプライチェーンDX事例をご紹介し、企業担当者が取るべき対策について考えていきます。し、企業担当者が取るべき対策について考えてみたいと思います。
出荷調整の基礎知識
出荷調整にまつわる用語一覧
出荷調整にはいくつかの種類があり、それぞれ状況によって異なる対応が求められます。
以下は代表的な用語とその意味です。
通常出荷:需要に対して十分な在庫があり、注文があれば安定して出荷できる状態
限定出荷:在庫不足や原材料の入荷遅延などにより、特定の数量や特定の顧客に優先的に出荷する状態
供給停止:一時的に供給が止まってしまう状態。一定期間だけ供給できない場合を指すことが多い
販売中止:製品自体の継続販売が不可能になり、終売となること
販売移管:製品の販売権や製造販売元が他社・他組織に移るため、元の会社では供給を行わなくなる状態
こうしたステータスを理解しておくと、社内外での情報共有や医療機関への案内がスムーズになります。担当者同士で「これは限定出荷で対応中」「当面は供給停止の見込み」など共通の理解を持っているだけで、混乱をかなり抑えられるでしょう。

出荷トラブルの具体的事例と失敗パターン
事例1:ジェネリック医薬品メーカーの供給停止による影響
2020年末、あるジェネリック医薬品メーカーの不正製造問題が発覚し、厚生労働省の行政処分により当該企業の出荷が停止しました。この影響で、国内の多くの病院・薬局で必要な薬が手に入らなくなり、他のメーカーへの代替需要が急増。結果として供給が追いつかず、多くの医薬品で出荷調整や供給停止が発生しました【厚生労働省 2023】。
事例2:サプライチェーンの混乱による医薬品不足
新型コロナウイルスの影響で、中国やインドからの原薬輸入が滞り、国内メーカーの生産が大幅に遅延しました。この結果、抗生物質や降圧薬、解熱鎮痛剤など幅広い医薬品で供給不足が生じました。加えて、輸送遅延や物流センターの人員不足が重なり、限定出荷や供給停止が相次ぎました【経済産業省 2023】。
出荷調整をめぐる最新サプライチェーンDXの動き
1.DXが変える在庫管理・需要予測
ここ数年、DXの活用により在庫管理や需要予測の手法が大きく変わっています。具体的には、以下のようなテクノロジーが導入されています。
リアルタイム在庫モニタリング:各倉庫や卸業者の在庫を即時確認し、需給バランスを可視化
AI需要予測:過去の販売実績や季節変動、感染症の流行などを分析し、将来の需要を高精度に予測
ブロックチェーン活用:製薬企業と卸業者間でデータを共有し、在庫情報の透明性を向上
自動発注システム:AIが需給バランスを分析し、適切なタイミングで発注を自動化
2. 実際に導入されたDX事例
国内の調剤薬局向けAI発注システム:AIを活用し、需要予測を行うことで在庫管理の最適化を実現。ある薬局チェーンでは、導入後に在庫削減率20%を達成【ファーマクラウド 2023】。
ブロックチェーンによる医薬品流通管理:日本IBMと大手製薬企業が共同で実証実験を行い、在庫の追跡や偽造品防止に効果を確認【IBM 2023】。
企業担当者が取るべき対策とポイント
「在庫・出荷ステータス」の可視化:ダッシュボードでリアルタイム管理し、混乱を回避
部署横断的なコミュニケーション強化:営業・物流・生産管理の連携を強化
バックアップ供給ルートの確保:複数のサプライヤーを確保し、リスク分散
<まとめ>出荷調整の次なるステージへ
出荷調整に対応するには、DXを活用して在庫管理・需要予測を高度化し、社内外の情報連携を強化することが不可欠です。特にAIやブロックチェーン技術の導入が進みつつあり、最新のDX手法を活用することで医療機関や薬局への安定供給が実現可能になりつつあります。
企業の皆様も、ぜひ最新の技術や業界動向を取り入れ、サプライチェーンの最適化に向けた一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

Dr.JOY株式会社DS事業部 カスタマーサクセス
長友
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