在宅医療が変わる! 病院×薬局薬剤師の実践連携術

2025/7/30

在宅医療が当たり前の時代、薬剤部で具体的にできることは?

2017年調査では在宅医療患者数が64万5,992件でしたが、2023年には訪問看護サービス単位数が前年比45%増の3,038百万、定期巡回型訪問介護看護は50%増加するなど、コロナ禍後に更なる拡大が確認されています。

在宅医療の進展に伴い、「病院薬剤師と薬局薬剤師がどのように協力すればいいかは、もう分かっている。だけど実際どう動けば?」と悩む薬剤部の声をよく耳にします。確かに、理想的な連携モデルは頭ではイメージできても、現場では「忙しすぎて手が回らない」「自分たちだけで取り組むには限界がある」といった壁にぶつかりがちです。

そこで今回は、「連携が重要なのは分かっている前提」で、具体的にどんな取り組みを行っている薬剤部があるのか、どういったツールを使って乗り越えているのかをご紹介したいと思います。すでに多くのことを試してきた方にとっても、「そういえばこれ、まだやっていなかったかも」と新たなヒントや発見につながれば幸いです。


他院・他薬局の具体的な取り組み事例

1. 退院調整専任薬剤師による「情報パス」の作成

ある総合病院では「退院調整専任の薬剤師」を配置し、退院直前に患者さんの服薬情報やリハビリ状況、アレルギー歴、日常生活の注意点などを1枚の紙にまとめる仕組みを導入しています。いわゆる「情報パス」のようなイメージです。そこには、薬の名前や用量だけでなく「痛みが強い時間帯」「飲み込みが困難で錠剤を割っている」などの具体的な情報も付記しています。

これを薬局薬剤師と共有することで、「患者さんがどんな背景を抱えて退院してきたのか」が一目でわかり、服薬指導のポイントをイメージしやすいと好評です。また、この情報パスは介護や訪問看護のスタッフにも渡されるため、多職種連携がより円滑になるメリットもあります。

ポイント

  • 病院薬剤師側が「どういう情報を薬局薬剤師が欲しがっているか」を深く理解し、紙面を最適化

  • 情報が1枚にまとまっていれば、薬局薬剤師だけでなく他の職種も参照しやすい

2. 月1回の「オンライン連絡会」で素早い情報共有

地域の医療機関が集まるネットワークで、月に1回ほどオンライン上(ビデオ会議ツールなど)で連絡会を開く仕組みがあります。参加者は病院薬剤師・薬局薬剤師のほか、在宅医療に携わる医師、訪問看護師、ケアマネージャーなど多職種にわたります。

議題としては、たとえば「退院後に困ったケース」「新しく導入された医療機器に関する情報共有」「在宅患者さんから上がった相談内容の共有」などが挙がります。この場で疑問点を整理しておくだけでも、次の在宅訪問時に生かせるという声が多く、「月に1回の少しの時間を確保するだけで、見落としやトラブルをかなり減らせた」とのことです。

ポイント

  • 貴重な対面ミーティングをたくさん設定するのは難しくても、オンラインなら距離を気にしなくていい

  • 細かい疑義照会や処方変更は別途システムを使うが、「ちょっと気になる案件」を拾う場があるだけで安心感が増す

3. 小児科外来での「二人三脚フォロー」による実証事例

在宅医療とは少し違う文脈ですが、小児科外来では「初回処方時に病院薬剤師が詳細に説明し、その後のフォローを地域の薬局薬剤師が引き継ぐ」という連携を実証しています。特に小児の保護者は、投薬の飲ませ方に戸惑うことが多いため、病院側が最初にじっくり説明して不安を解消。続けて薬局側で定期的に「ちゃんと飲めていますか?」と確認しつつ、問題があれば病院へすぐ報告できる仕組みです。

結果的に、保護者から「困ったときに病院に連絡するか薬局に連絡するか迷わない」「病院と薬局が情報を共有してくれている安心感がある」という声が寄せられています。在宅医療においても同じように、最初の段階でしっかり薬学管理を行い、その後のフォローは身近な薬局に任せる形が有効なケースがあります。

ポイント

  • 病院での初回説明を手厚くすることで、服薬コンプライアンスが高まる

  • 「院内外で伝えることが違う」といった混乱を防ぐため、初回時点で連携ルールや連絡先を明確化


ツール活用の最前線:紙・電話だけじゃない、テキストベースのやり取り

「連携を進めるためには、やっぱりこまめな情報共有が大事」と言われますが、電話やFAXに頼りすぎると「お互い忙しくてタイミングが合わない」「内容が紙ベースで散乱してしまう」など現実的な問題が出てきます。そこで、注目されているのがテキスト形式のグループチャットです。

1. メリット:記録が残り、必要なときに確認しやすい

テキストチャットの良さは、電話とは違って「履歴が自動で保存される」ことです。どの患者さんに関するやり取りか、どの時点で疑義が発生したのかなど、後から振り返るのも簡単です。また、忙しい場合は通知をオフにしたり、落ち着いたタイミングでまとめて返信できるため、お互いのスケジュールを合わせる必要がありません。

たとえば「何かちょっと気になることがあるけど、わざわざ電話をかけるほどでもないかも…」というケースでも、気軽にメッセージを残せるので情報の取りこぼしを防げます。小さな相談や「〇〇さん、最近の症状どうでしょう?」といった確認ごともテキストならやり取りがスムーズです。

2. ツール例:院内外のメンバーをつなぐ「グループ」機能

具体的には、院内スタッフだけでなく、かかりつけ薬局や訪問看護、ケアマネージャーなど外部メンバーも同じグループに招待できるサービスが増えています。患者さんごとに専用のトークルームを作成し、退院後のフォローアップや在宅訪問の予定調整などを一括管理する事例もあるようです。(患者さんのIDを匿名化した上で、アクセス権を限定(医師・薬剤師・ケアマネのみ可)。)

電話だと「今忙しいから出られない」「メモを取る暇がない」という問題が多発しがちですが、グループチャットであれば送信ボタン一つで関係者に同報できるため、見落としが格段に減ります。もちろん、疑義照会や処方変更などは別途公式の手続きシステムを使うとしても、日常的なこまめなコミュニケーションをとる場としては非常に便利です。


悩みを抱える薬剤部へ、もう一歩踏み込んだアクションを

1人や1つの薬剤部だけで連携を完成させるのは難しいものです。病院・薬局のどちらか一方が「もっと連携したい」と思っても、相手側が動きにくい状況だとなかなか進みません。そんなときこそ、「外部から提案してみる」勇気や、「まずは自分たちから情報を発信する」姿勢が大切ではないでしょうか。

  • 外部勉強会・連絡会の開催を呼びかける
    「忙しくて無理かな」と思わずに、まずは身近な薬局や近隣の病院に声をかけ、小さな勉強会やオンライン連絡会を企画してみる。必要最低限の回数であっても、顔を合わせる機会があるだけで連携が進むケースは多いです。

  • 試しにツールを導入してみる
    全面導入は難しくても、まずは一部の患者さんや一部の部署だけでお試し導入してみる方法があります。実際に使ってみると「想像以上に便利だった」「紙の書類よりも管理しやすい」などの声が出やすく、周囲を巻き込むきっかけになります。

  • お互いの業務フローを公開し合う
    病院薬剤師と薬局薬剤師が「どの段階でどんな作業をしているか」を見える化して共有すると、自然と「それならここで情報をもらえたら助かる」「この手順が被ってるから一緒にやろう」といった具体的なアイデアが生まれます。すでに多くのことを試していても、改めて業務フローを見直すと新しい発見があるかもしれません。


まとめ:新しいアイデアを取り入れ、次の一手へ

在宅医療が進むなかで、病院薬剤師と薬局薬剤師が連携する重要性は言うまでもありません。しかし、実際の業務に落とし込むにはさまざまな試行錯誤が必要で、「もういろいろやってみたけれど、いまいち成果が感じられない」という声もよく聞きます。

そんなときは、ほかの病院や薬局が取り組んでいる事例やツールの使い方を参考にしてみるのがおすすめです。先進的な事例を少しアレンジして自院・自薬局でも実践してみると、新しい連携モデルが生まれるかもしれません。また、テキストベースのコミュニケーションツールを上手に使えば、疑義照会や処方変更などの公式の連絡ルートとは別に、普段から院外とも気軽に意見交換できる場が生まれます。

ぜひ今回の記事をきっかけに、チーム内で「こんな方法があるみたいだけれど、うちでも少し試してみない?」と話し合ってみてください。改めて自分たちの連携体制を振り返ることで、思わぬ改善策や新しいアイデアが見えてくるはずです。そして、少しずつでも実践を積み重ねながら、在宅医療の現場でより多くの患者さんに安心と安全を届けられる連携体制を築いていきましょう。


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