「あれも、これも…」マルチタスクな薬剤部のリアル
日々の調剤や服薬指導に加え、医師や看護師からの問い合わせ対応、在庫チェック、カルテ確認、学生・新人の指導――。薬剤部には実にさまざまな業務が存在します。
さらに、「今の仕事に直接関係ないけど、やらないわけにはいかないタスク」が細かく積み上がるのも現状です。例えば:
電話: いつ鳴るかわからず、忙しいときに限ってかかってくる
書類整理: 期限が迫っているものがあっても、ほかの仕事に追われがち
ちょっとした問い合わせ: 口頭や紙ベースの連絡が多く、記録に残りにくい
こうした細々した作業が連続すると、落ち着いて調剤や投薬の確認をする時間すら奪われてしまいます。しかも、電話の場合はその場ですぐに出ないと相手を待たせてしまいますよね。忙しい中断の連続で、気づけば一日の終わりにはヘトヘトに…。
「こんな状況、うちだけかな?」と思いがちですが、多くの薬剤部で同じ悩みが起きています。そこで本記事では、「ちょっとした用件」によるマルチタスクの負担を軽くするためのデジタルツール活用法をご紹介します。ポイントは、「電話でもメールでもない、気軽で安全なコミュニケーション手段を整えること」です。
業務効率UPのためのデジタルツール活用ポイント3選
1. チャットツールで瞬時に情報共有
電話やメールの代わりに、チャットツールを使ってみるのはいかがでしょうか。
「問い合わせしたいけど、今電話すると相手の手が止まってしまうかも…」「ちょっとした連絡なのにメールを書くのは面倒…」といったストレスを減らせます。
すぐに返信しなくてもOK:
相手が落ち着いたタイミングで返せる。履歴が残り、見返しやすい:
記憶に頼らず、テキストログを後から確認できる。
ただし、医療現場で扱う情報には個人情報が含まれる場合があります。セキュリティ対策がしっかりした医療専用チャットツールを選ぶことが大切です。エンドツーエンド暗号化(TLS 1.3以上)を採用し、多要素認証(MFA)を必須化した医療専用システムを選定しておけば、「利便性」と「情報保護」の両方を同時に実現できます。
2. 電子カルテや薬剤管理システムで重複チェックを自動化
電子カルテ(2025年現在、500床以上の病院では電子カルテ導入率99%、200床未満では72%)や薬剤管理システムを導入している病院は増えていますが、その機能をフル活用できていますか?
特におすすめなのが、「自動チェック機能」です。重複投与や禁忌薬が入力された際に、すぐにアラートを出せる設定になっているでしょうか。
ヒューマンエラーを減らす:
忙しいときにこそ、システムがアラートを発してくれると安心。(J-STAGE調査によると調剤過誤防止システム導入で誤配率が0.008%→0.003%に改善(p<0.05))在庫管理との連携:
発注時期や不足がリアルタイムで分かると、慌てて補充しなくても済む。
こうした機能を活用すれば、「最終確認に集中する」ことができ、薬剤師の負担も軽減されます。単純作業にかかる時間やエネルギーを、服薬指導や患者さんとのコミュニケーションに回せるのは大きなメリットです。
3. エラー対策・ノウハウをオンラインで共有
調剤のヒヤリハットや医薬品の取り違えなど、「現場の生の情報」は薬剤部全体で共有しておきたいもの。ですが、口頭やメモでの報告だけだと埋もれやすいですよね。そこで役立つのが、オンラインのナレッジ共有システムです。
エラー事例をデータベース化:
「似た名前の薬はリスト化して要注意にする」「こういう確認フローを徹底すると事故が減った」など、過去の失敗も財産に。新人や派遣スタッフへの教育:
一度まとめておけば、誰でも参照できる。口伝えに比べ、ミスや情報不足を減らしやすい。
このようなシステムを導入すると、同じ過ちの繰り返しを防ぎながら、薬剤部全体の底力を高めることができます。
使い方次第で効果倍増!院内メッセージ活用のメリット
薬剤部内や他職種との連携をよりスムーズにするには、「院内メッセージ」の導入を検討してみてください。これは、病院内のコミュニケーションを一本化し、必要な情報を必要な相手だけに届けることを目的としたメッセージ機能です。
1. リアルタイム通知で即レス対応
急ぎの疑義照会や在庫トラブルが起きたとき、プッシュ通知で担当者にすぐ知らせられます。
ただし、電話と違って「その場で出ないと困る」というプレッシャーは小さめ。メッセージは常に記録に残るので、落ち着いて返信できます。忙しさのピークが過ぎてからでも、内容が分からなくならないのは大きな利点です。
2. グループメッセージで情報整理
外来チームだけのグループ
病棟別のグループ
薬剤部内の新人教育専用グループ
など、複数のグループを用途に合わせて作成できます。
必要な人だけが通知を受け取る設計にすれば、「メッセージが多すぎて追い切れない」という事態を防げます。今まで電話や口頭で済ませていたやり取りをグループ化すれば、返信漏れや連絡ミスを減らすことも期待できます。
3. データ共有もサクッと完結
薬剤の包装変更やマニュアル更新など、画像やPDFファイルを添付して連絡する機会は多いですよね。院内メッセージなら、テキストとファイルを同時に送れるため、「あの資料、どこにやった?」と探し回る手間も軽減されます。やり取りの履歴が一元管理されるので、情報の見落としやダブりを防ぎやすいのもメリットです。
まとめ:無理のないステップでDXを進めよう
薬剤部の業務範囲は、思っている以上に広範囲にわたります。
そのため、マルチタスク状態が当たり前のように受け止められがちです。
ですが、ちょっとしたツールを導入するだけで、「細かいタスク」がグッと減る可能性があります。
チャットツールで電話の頻度を下げ、気軽に連絡を取り合う
電子カルテの自動チェック機能を活用し、重複投与ミスを防ぐ
院内メッセージで必要情報を必要なチームだけに届け、通知過多を回避
個人情報保護事例共有時は患者IDを匿名化し、アクセス権限を役職別に階層化
こうした取り組みを少しずつ始めるだけでも、「あれもこれも同時進行」というストレスが和らぎます。そして何より、薬剤師が本来力を注ぎたい「患者さんへのケア」にエネルギーを使えるようになるのは大きなプラスです。

最初は「IT導入なんて大変そう…」と不安かもしれません。
しかし、実際に使い始めると「もっと早く取り入れればよかった」という声は多いもの。ぜひ一度、自院の環境やスタッフの状況に合わせて、導入を検討してみてください。

Dr.JOY株式会社DS事業部 カスタマーサクセス
長友
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