

- はじめに
- 1. 「2024年問題」という背景と人手不足の現状
- 1.1. 人手不足を加速させる背景:「2024年問題」とは?
- 1.2. データで見る人手不足の現状(2026年時点)
- 2. スタッフ不足が患者ケアに与える影響
- 3. 医療の人手不足を解消する4つの解決策
- 3.1. 労働環境・待遇の改善(2024年問題への対策として)
- 3.2. 医療DX導入によるIT活用(RPA・クラウド型電子カルテ)
- 3.3. AI電話による電話対応の自動化
- 3.4. 病院間の人材連携・シェアリング
- 4. 医療DX導入を成功させるための4つのステップ
- ステップ1:現状の業務課題の洗い出し
- ステップ2:現場スタッフへのヒアリングと理解の促進
- ステップ3:自院に合ったツールの選定
- ステップ4:スモールスタートでの試験運用と改善
- 5. 医療DX導入で注意すべき3つのポイント
- 6. Dr.JOYの「AI電話」で電話対応の負担を軽減
- 7. よくある質問(FAQ)
- 8. まとめ
- 9. 参考資料
はじめに
病院の人手不足は、医師や看護師だけでなく、事務職や技術職など運営に関わる全職種に及んでいます。高齢化による医療需要の増加に加え、「2024年問題(医師の時間外労働上限規制)」により従来の体制が見直されたことで、限られたスタッフへの業務集中が深刻化しています。この状況は、診療待ち時間の長期化や電話対応の遅延などを招き、患者ケアの質低下に直結しかねません。
本記事では、こうした人手不足の背景と影響を整理したうえで、労働環境の改善や医療DX導入など、現場ですぐ取り組める「4つの解決策」をわかりやすく解説します。
1. 「2024年問題」という背景と人手不足の現状
1.1. 人手不足を加速させる背景:「2024年問題」とは?
「2024年問題」とは、2024年4月から適用された「医師の時間外労働の上限規制」に伴う一連の課題を指します。これまで日本の医療は、医師の長時間労働や自己犠牲によって支えられてきた側面がありました。
しかし、この規制によって勤務時間が厳格化されたことで、従来通りの医療体制(シフトや救急受け入れ)を維持するためには、これまで以上のスタッフ数が必要になりました。
さらに、医師の負担を減らすために、業務の一部を看護師や医療事務員に任せる「タスク・シフト/シェア」が進められましたが、これが結果的に他職種の業務量増加を招き、病院全体で連鎖的な人手不足を引き起こす大きな要因となっています。
1.2. データで見る人手不足の現状(2026年時点)
高止まりする有効求人倍率

図1:求人、求職及び有効求人倍率の推移(令和8年・2026年7月現在)
出典:厚生労働省『一般職業紹介状況(職業安定業務統計)』のデータを基に作成。
厚生労働省『一般職業紹介状況(職業安定業務統計)』によると、全職業平均が1.1〜1.3倍程度であるのに対し、看護師は2.4倍前後(2025〜2026年推移)と極めて高い水準が続いています。
診療放射線技師などの技術職は全国平均で1倍前後ですが地域差が大きく、医療職全体の採用難が浮き彫りになっています。
最大27万人の看護師不足

図2:深刻化する2025年の看護職員不足問題。あらゆる分野で需要が拡大し、最大シナリオでは202万人もの看護人材が必要に(出典:厚生労働省)
厚生労働省『看護職員の需給に関する検討会』の推計データでは、医療需要がピークに達することで、供給見込み(約175万〜182万人)に対し必要数(約188万〜202万人)が上回り、最大約27万人の看護師が不足すると指摘されていました。2026年現在、この需要ピークと「2024年問題」が重なり、不足はより深刻化しています。
こうした現状の根底には長時間労働などの環境課題があり、特に地域の中小病院では経営面の制約から待遇改善に踏み切れず、「離職と採用難」の悪循環に陥っているのが実態です。
2. スタッフ不足が患者ケアに与える影響
診療・対応の遅延
診療待ち時間の長期化や、電話問い合わせへの応答遅れが生じやすくなります。
業務ミスのリスク増加
事務スタッフの不足により、患者情報の管理や診療報酬請求などで入力ミスや対応漏れが起こりやすくなります。
患者の不安の増加
電話がつながりにくい状態が続くと、予約変更や体調相談をしたい患者の不安が高まりやすくなります。
スタッフの負担集中
限られた人数で業務を回すことで、残っているスタッフ1人あたりの負担が増え、さらなる離職につながる可能性があります。
これらが積み重なることで、患者満足度の低下だけでなく、医療安全の観点でもリスクが高まりやすいとされています。
3. 医療の人手不足を解消する4つの解決策
医療の人手不足に対しては、「新しく人を採用する」という発想だけでなく、「今いる人数で業務が回る仕組みを作る」という視点への転換が有効とされています。
3.1. 労働環境・待遇の改善(2024年問題への対策として)
給与水準や勤務時間、休暇取得のしやすさといった労働条件の改善は、人材の定着・確保に向けた土台となる取り組みとされています。
時間外労働の実態を把握し、業務量の偏りを是正する
有給休暇や勤務間インターバルを取得しやすい体制を整える
キャリアパスや評価制度を明確にし、長期的に働き続けやすい環境を整える
【成功事例】勤務環境改善で離職率低下と生産性向上を実現した診療所
茨城県の医療法人社団芳尚会「吉成医院」では、勤務環境改善マネジメントシステム(厚生労働省が普及を進める取り組み)を活用し、有給休暇の取得推進や労働時間の見直しを進めました。
その結果、離職率の低下と生産性の向上につながったことが、厚生労働省の医療勤務環境改善支援センターの資料で報告されています。専任の労務担当者がいない診療所でも取り組める規模から始められた点が特徴です。
※参考記事:https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/
3.2. 医療DX導入によるIT活用(RPA・クラウド型電子カルテ)
医療DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、AIやクラウドなどのITの力を借りて、病院の業務のやり方そのものを見直す取り組みのことです。難しく聞こえるかもしれませんが、要は「今まで人がパソコンに手入力していた作業を、機械に任せる」というイメージで捉えると分かりやすいでしょう。医療DX導入で特に活用されているのが、次の2つのツールです。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
パソコン上の定型的な事務作業をソフトウェアが自動で代行する技術です。分かりやすく言うと「パソコンの中で働いてくれる、目に見えない事務員」のようなものです。検査データの電子カルテへの転記や、診療報酬請求における単純なデータチェック、勤怠データの集計といった業務の自動化に活用されています。
クラウド型電子カルテ
院内に大型サーバーを設置せず、インターネット経由で患者データを共有できる仕組みです。医師が入力した内容を看護師や薬剤師がすぐに確認できるため、部署間での情報伝達にかかる時間の短縮につながるとされています。
医療DX導入によって定型業務を自動化することで、事務スタッフは患者対応など人にしかできない業務に時間を割きやすくなるとされています。
【成功事例】RPAで年間約2,453時間の業務削減を実現した総合病院
約570床を有する東京歯科大学市川総合病院では、放射線科や診療情報部、薬剤部などでRPAを導入し、患者情報の印刷や看護記録の確認作業といった電子カルテ連携業務を自動化しました。
その結果、年間で約2,453時間の業務時間削減効果があったことが業界紙で報告されており、事務職員からは「ミスが減少した」「単純作業から解放された」といった声が上がっているとされています。
※参考記事:https://newswitch.jp/p/25003
3.3. AI電話による電話対応の自動化
病院の受付には、診療時間の問い合わせや予約変更といった定型的な電話が多く寄せられます。AI電話を一次窓口として活用することで、受付スタッフが目の前の患者対応を中断せずに済む環境を整えやすくなります。
緊急性の高い用件については人間のスタッフへ自動で引き継ぐ運用が一般的とされており、夜間や休日など人手が手薄な時間帯の対応力を底上げする手段としても注目されています。
【成功事例】AI電話で健診予約の電話対応を効率化した病院
北海道の帯広第一病院では、健康診断や人間ドックの予約受付にAI電話を導入しました。大量の電話にスタッフが対応しきれない状況を受けた取り組みで、通話の待ち時間削減などの効果が上がっていることが地元紙で報じられています。現場の負担軽減と患者の受け入れ体制強化を同時に図れた事例です。
※参考記事:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1317595/
3.4. 病院間の人材連携・シェアリング
地域の病院同士が連携し、専門職の人材やノウハウを共有する取り組みも広がりつつあります。1つの病院だけで人材を抱え込むのではなく、地域全体で医療提供体制を支える発想への転換が、今後の人手不足対策の1つとして期待されています。
【成功事例】病院間の看護師派遣で人材不足をカバーした取り組み
厚生労働省の資料によると、国立病院機構では、看護師の確保が難しい病院に対して、比較的人員に余裕のある病院から数か月単位で看護師を派遣する取り組みが実施されてきました。
近年では、複数の医療法人が「地域医療連携推進法人」という制度を活用し、職員の相互派遣や共同研修を通じて、地域全体で人材を融通し合う仕組みづくりも進められています。
※参考記事:https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002apv7-att/2r9852000002aq0e.pdf

4. 医療DX導入を成功させるための4つのステップ
「システムを導入してみたものの、現場が使いこなせずに終わってしまった」という失敗を防ぐためには、医療DX導入を次の4つのステップに沿って進めることが有効とされています。ITに詳しい担当者がいない病院でも取り組みやすい順番です。
ステップ1:現状の業務課題の洗い出し
まずは、自院のどの業務にムダが多いのかを客観的に把握することから始めます。「朝9時から10時に電話が集中して受付が止まっている」「紙の問診票を電子カルテに手入力する作業に毎日2時間かかっている」など、具体的な課題とかかっている時間をリストアップします。
ステップ2:現場スタッフへのヒアリングと理解の促進
経営層や院長だけでシステム導入を決めてしまうと、実際に使う現場のスタッフに浸透しにくいとされています。「スタッフの負担を減らして早く帰れるようにするための取り組みだ」という目的を共有し、ITへの抵抗感を和らげることが大切です。
ステップ3:自院に合ったツールの選定
高機能で高額なシステムが、必ずしも自院に合っているとは限りません。ITに不慣れなスタッフが多い場合は、「操作画面が直感的で分かりやすいか」「電話相談や訪問サポートなどのサポート体制が整っているか」を基準に選ぶことが望ましいとされています。
ステップ4:スモールスタートでの試験運用と改善
最初から病院全体・全業務を一気にデジタル化するのはリスクが高い進め方です。「まずは夜間・休日の電話対応だけAIに任せる」「一部の診療科だけで新しい予約システムを試す」といった小規模な範囲から始め、問題点を見つけて改善しながら、少しずつ全体へ広げていく方法が現実的とされています。
5. 医療DX導入で注意すべき3つのポイント
便利なITシステムですが、患者の個人情報を扱う医療機関という特殊な環境で導入する際には、次のような点への配慮が求められます。
セキュリティとプライバシーの確保
患者の機微な個人情報を取り扱うため、導入するシステムが厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠しているか、通信が暗号化されているかを確認しておくことが望ましいとされています。
高齢患者への配慮(デジタルディバイド対策)
スマートフォンやAI機器の操作に不慣れな高齢の患者が取り残されないよう工夫することが大切です。例えば、AI電話の操作が難しい方には自動で人間のスタッフにつながるルート(フェールセーフ)を残しておくといった、柔軟な対応が求められます。
継続的な教育とランニングコスト
システムは導入して終わりではありません。スタッフの入れ替わりに合わせた操作マニュアルの整備や、毎月の保守費用が経営を圧迫しないかを事前にシミュレーションしておくことが重要とされています。
6. Dr.JOYの「AI電話」で電話対応の負担を軽減
Dr.JOYは、医療機関向けのコミュニケーション基盤として、電話対応や情報共有にまつわる現場の負担を軽減するために設計されたサービスです。そのなかでも「AI電話」は、患者からの着信をAIが24時間365日ヒアリングし、要件の振り分けや一次対応を行う機能です。

Dr.JOYのAI電話は、次のような場面で活用されています。
定型的な問い合わせへの一次対応
予約の確認や変更、診療時間の案内といった定型的な用件をAIがヒアリングし、対応内容を記録します。
用件に応じた振り分け
ヒアリングした用件の内容に応じて、人間のスタッフへの転送が必要なものを自動で振り分けます。
通話内容の自動テキスト化
夜間や休日にAIが対応した内容も自動で文字として記録されるため、翌朝出勤したスタッフが要件を一目で把握できます。
なお、電話対応の自動化に向けた選択肢のひとつとして、Dr.JOYでも専任のIT担当者が不在の医療機関様で導入しやすい『AI電話』機能を提供しております。現場の負担軽減をご検討の際、ご参考の1つとして資料等をご確認いただけますと幸いです。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 病院の人手不足は、今後も続くのでしょうか?
A1:少子高齢化による医療需要の増加と、生産年齢人口の減少が同時に進んでいるため、人手不足の傾向は当面続くと見られています。2024年問題への対応も重なり、病院運営における人員配置の見直しは引き続き重要なテーマになるとされています。
Q2. 人手不足対策として、IT導入以外に有効な方法はありますか?
A2:労働環境や待遇の改善、病院間での人材連携など、IT導入以外の取り組みも並行して検討されることが多いようです。医療DX導入は、こうした取り組みを支える手段の1つとして位置づけられています。
Q3. AI電話などのシステムは、専任のIT担当者がいない病院でも運用できますか?
A3:近年のクラウド型システムやAI電話サービスは、専門的なIT知識がなくても操作できる設計になっているものが多いとされています。導入時のサポート体制が整っているサービスを選ぶことで、専任担当者がいない病院やクリニックでも運用しやすいようです。
8. まとめ
医療の人手不足は、医師や看護師だけでなく、事務スタッフや電話対応スタッフ、技術職まで含めた幅広い課題です。労働環境の改善を土台としながら、医療DX導入(RPA・クラウド型電子カルテ)やAI電話を組み合わせることで、限られた人数でも業務が回る仕組みを段階的に整えていくことが、今後の病院運営において重要になるとされています。
こうした電話対応の効率化に向けた選択肢の1つとして、Dr.JOYの「AI電話」のようなサービスも活用されています。自院の課題に合わせて、無理のない範囲から取り組みを始めてみてください。
9. 参考資料
厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1.html
厚生労働省「医師の働き方改革」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/ishi-hatarakikata_34355.html
厚生労働省 医療勤務環境改善支援センター「有床診療所における勤務環境改善の取組みと成果(医療法人社団芳尚会 吉成医院)」
https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/
厚生労働省『看護職員の需給に関する検討会』
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_338805.html
厚生労働省「国立病院機構における病院間看護師派遣の実績」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002apv7-att/2r9852000002aq0e.pdf
ニュースイッチ「東京歯科大学市川総合病院のRPA導入による業務時間削減事例」
北海道新聞「健診予約、AI電話対応で効率化 帯広第一病院」

Dr.JOY株式会社 AI電話事業部 カスタマーサクセス
森川
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