大学病院医師の兼業、その実態と未来は? ~働き方改革とDXがもたらす変化~ 

2025/5/20

はじめに

大学病院は、最先端医療・医学研究・次世代の育成という重責を担う日本の医療の中核です。そこで働く医師たちは高度な専門性を発揮していますが、近年、本務に加えて「兼業」を行うケースが増えているように感じます。働き方への価値観が変化する中、大学病院医師の姿も多様化しているのかもしれません。

特に2024年4月から本格化した「医師の働き方改革」は、この流れに大きな影響を与えています。長時間労働是正が求められる中、兼業は収入補填だけでなくスキルアップや自己実現の手段としても注目されています。

しかし、大学病院という特殊な環境での兼業の実態はどうなっているのでしょうか? それは医師自身や病院、地域医療にどんな影響を与えているのでしょう? そして、「働き方改革」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、彼らの働き方や病院のあり方をどう変えていくのでしょうか?

この記事では、大学病院医師の「兼業」のリアルに迫り、その現状と課題、そして未来への展望をDXという視点も交えて考えていきます。


「兼業は当たり前?」大学病院における医師兼業のリアル

1.兼業している医師はどれくらい?

驚くかもしれませんが、大学病院の医師にとって兼業は、もはや「当たり前」に近い状況です。ある調査では、大学病院勤務医の9割以上が何らかの兼業(アルバイト)をしているというデータもあります。

この背景には、大学病院が地域医療で果たす役割があります。多くの民間病院、特に地方では常勤医の確保が難しく、大学病院からの医師派遣(多くは兼業)に頼って診療体制を維持しています。つまり、大学病院医師の兼業は、地域医療提供体制を支える構造的な要素になっているのです。だからこそ、働き方改革による兼業への影響が、現場で強く懸念されています。

2.どんな兼業をしている?

最も一般的なのは、やはり他の病院や診療所での診療業務(非常勤勤務やスポット勤務)です。専門性を活かせ、比較的報酬も得やすいためです。

しかし、それ以外にも、医師免許や知識を活かした多様な兼業があります。例えば、講演・執筆活動、産業医、オンラインでの健康相談や記事監修、医療系コンサルティングなど、その内容は多岐にわたります。医師たちが兼業を通じて、多様な経験や収入源を求めていることがうかがえます。

3.兼業する本当の理由とは?

医師たちが兼業を選ぶ理由は様々ですが、最大の動機は「収入の増加」です。大学病院の給与水準は他の病院と比べて低い傾向にあるとされ、「生活費のため」「教育資金のため」「奨学金返済のため」といった経済的な理由が切実です。

しかし、お金だけではありません。「スキルアップ・経験」も重要な動機です。大学病院では経験しにくい症例に触れたり、異なる環境で働くことで、医師としての幅を広げたいという思いがあります。

さらに、「人脈形成」や「自己実現」、本業との「メリハリ・リフレッシュ」といった精神的な充足感を求めて兼業する医師も少なくありません。興味深いのは、兼業によって「精神的な余裕が生まれる」という声が多いことです。プレッシャーの大きい大学病院という環境で、兼業が収入補助だけでなく、ある種の精神的な支えやストレス対処の役割を果たしているのかもしれません。


兼業の光と影:医師と病院にもたらすメリット・デメリット

1.医師にとっての「光」と「影」

  • 光(メリット): 収入増、スキルアップ、多様な経験、キャリア選択肢の拡大、精神的な充足感・リフレッシュ。

  • 影(デメリット): 過重労働による心身の疲労、ワークライフバランスの悪化、燃え尽きリスク、本業への影響懸念、確定申告の手間。

2.大学病院側の「メリット」と「課題」

  • メリット: 実質的な人材確保策(低めの給与でも医師を維持)、兼業先からの知識・スキルの還流、地域連携の維持・強化。

  • 課題: 本業(特に研究・教育)へのコミットメント低下懸念、労務管理の複雑化(特に働き方改革下での時間把握)、利益相反(COI)リスク(特に企業との兼業)、医師流出リスク。

3.地域医療への「貢献」と「依存」

  • 貢献: 大学からの医師派遣(兼業)は、地域・民間病院の診療体制維持に不可欠。医療連携促進や公衆衛生活動にも寄与。

  • 依存・脆弱性: 地域医療が大学派遣に過度に依存しているため、派遣縮小により地域医療が崩壊しかねない脆弱性を持つ。効率的な資源配分と言えない側面も。

このように、大学病院医師の兼業は、現状の医療システムを支える重要な役割と、様々なリスクや課題を併せ持つ、複雑な構造にあることがわかります。


避けて通れない「働き方改革」の壁

2024年4月から本格化した「医師の働き方改革」は、兼業のあり方に大きな影響を与えています。

1.何が変わった?

最大のポイントは、時間外・休日労働の上限規制です。原則年間960時間、特例でも年間1860時間までと定められました。そして重要なのは、この上限が*本務先と全ての兼業先の労働時間を合計した「総労働時間」*で計算される点です。連続勤務時間制限や勤務間インターバルなどの健康確保措置も義務化されました。

2.なぜ難しい?

ルール遵守の最大の壁は、兼業先での労働時間を正確に把握することの難しさです。現状は医師の自己申告に頼らざるを得ず、その正確性には疑問符がつきます。また、「どこまでが労働時間か」という定義の曖昧さ(自己研鑽、待機時間、移動時間など)も問題を複雑にしています。

3.現場への影響と懸念

この改革は、現場に様々な影響と懸念をもたらしています。

  • 医師の収入減: 兼業時間削減による収入減を多くの医師が心配しています。

  • 地域医療への打撃: 大学からの医師派遣が縮小・中止され、地域医療崩壊の危機感が強まっています。

  • 大学の研究・教育への圧迫: 限られた時間の中で、研究・教育に充てる時間が犠牲になるのでは、という強い懸念があります。

働き方改革は医師の健康を守る上で重要ですが、特に兼業との兼ね合いで深刻なジレンマを生んでおり、その解決が急務です。


DXは救世主となるか? テクノロジーが切り開く可能性

この困難な状況を打開する鍵として期待されるのがDXです。DXは、デジタル技術で業務や組織を変革し、新たな価値を生み出す取り組みです。

1.「時間」を生み出す業務効率化

DXは、医師やスタッフの貴重な「時間」を生み出します。

  • 正確な勤怠管理: ICカードやスマホアプリ等で、兼業時間を含む総労働時間を客観的に把握・管理し、働き方改革のコンプライアンスを支援します。

  • 事務作業の自動化: 電子カルテ連携、RPA、AI活用で、書類作成や定型業務を効率化し、医師が専門業務に集中できる環境を作ります。

  • 円滑なコミュニケーション: チャットツール等で情報伝達を迅速・正確にし、無駄な時間を削減します。

  • AIによる診療支援: 画像診断支援やカルテ入力補助などが、医師の負担を軽減します。

2.場所を選ばない働き方へ

DXは、より柔軟な働き方を可能にします。

  • 遠隔医療(オンライン診療など): 場所に縛られず、移動時間を削減した効率的な兼業が可能になります。

  • リモートワーク: 画像診断や研究、教育など、特定の業務は病院外でも行えるようになります。

  • デジタル兼業プラットフォーム: オンラインでのマッチングサービスが新たな兼業機会を提供します。

3.情報共有で連携強化

DXは、医療機関間の壁を取り払い、連携をスムーズにします。

  • 全国医療情報プラットフォーム: 実現すれば、患者情報を全国で共有でき、より安全で質の高い医療提供に繋がります。

  • 電子カルテ情報の標準化: 異なるシステム間での情報共有を可能にします。

  • セキュアな連携ツール: 紹介状や画像を安全に送受信でき、施設間連携を円滑にします。

4.DX導入の課題

もちろん、DX推進にはコスト、セキュリティ対策、ITリテラシー、変化への抵抗といった課題も存在します。技術導入だけでなく、組織文化の変革も伴走させる必要があります。

DXは、働き方改革の要請に応えつつ、医療の質を高める強力な武器です。特に正確な勤怠管理は、兼業問題解決の鍵となり得ます。しかし、その導入には様々な壁があることも事実であり、多角的なサポートが不可欠です。


まとめ

大学病院医師の兼業は、個人のニーズと地域医療維持という側面を持つ一方、過重労働や本務への影響といったリスクをはらむ、複雑な問題です。

働き方改革は、医師の健康を守る上で不可欠ですが、兼業時間の把握という大きな課題に直面し、地域医療や大学の研究・教育機能への影響も懸念されています。

この状況を打開し、持続可能な未来を築く鍵はDXの戦略的な活用にあります。勤怠管理の適正化、業務効率化、柔軟な働き方の実現、情報共有の促進は、働き方改革の課題に対応し、医師が健康でやりがいを持って働き続けられる環境を作る上で欠かせません。

しかし、技術だけでは不十分です。大学病院医師の処遇改善、DX導入支援、地域医療体制の再構築、大学の研究・教育機能を守るための策が求められます。大学病院自身も、労務管理の徹底、積極的なDX推進、地域との連携強化が必要です。医師一人ひとりも、自身の働き方を見つめ直し、変化に主体的に関与していく姿勢が大切になるでしょう。

大学病院がその重要な役割を果たし続けるためには、旧来の慣習を見直し、テクノロジーを賢く活用し、医師が誇りを持って働ける環境を関係者全員で創り上げていく必要があります。

医師の働き方改革への対応、兼業を含む正確な勤怠管理、院内のスムーズな情報共有、そしてタスクシフトによる業務効率化。これらの課題解決に向けて、具体的なソリューション導入を検討されている管理職やDX推進担当者の方も多いのではないでしょうか。 

もし、より具体的な情報や、貴院の状況に合わせた解決策にご関心があれば、Dr.JOYの兼業・副業管理機能もぜひご覧ください。 


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