【管理者・DX担当者向け】働き方改革下の医師兼業:大学病院のコンプライアンスと効率化策 

2025/5/19

勤怠管理がもっとよくわかる公式パンフレットを配布中!勤怠管理がもっとよくわかる公式パンフレットを配布中!

はじめに

2024年4月に本格施行された「医師の働き方改革」。施行から1年が経過した2025年4月現在、その影響は医療現場の隅々にまで及び、特に多くの役割を担う大学病院では、働き方の見直しが喫緊の課題となっています。この改革の柱である時間外労働の上限規制は、大学病院に勤務する医師の働き方、そしてキャリアや生活に深く関わる「兼業」のあり方にも、大きな変化をもたらしています。

大学病院医師にとって兼業は、収入確保のみならず、スキルアップや研究活動、地域医療への貢献など、多様な目的を持つ重要な活動です。しかし、労働時間管理の厳格化は、この長年の慣行にも変革を迫っています。本記事では、施行後1年を経た医師の働き方改革が、大学病院医師の兼業にどのような具体的な影響を与え、現場ではどのような課題が顕在化しているのか。そして、それらの課題にどう対応していくべきかを、最新の情報を踏まえて考察します。


医師の働き方改革と大学病院を取り巻く現状

医師の働き方改革の核心は、時間外・休日労働時間の上限規制です。原則として月100時間未満、かつ年960時間(A水準)が上限となります。ただし、地域医療提供体制の確保などのために暫定的に必要とされる場合は年1860時間(B水準・連携B水準)、集中的なスキルアップが必要な若手医師などには同じく年1860時間(C水準)が上限として設定されています。このうち、B水準については、2035年度末までの終了が目標とされています。大学病院は特定機能病院としてB水準やC水準の指定を受けている施設が多いものの、従来の労働慣行からの転換は容易ではありません。

重要な点として、B・連携B・C水準が適用される医師に対しては、面接指導や連続勤務時間制限、勤務間インターバル確保といった追加的健康確保措置を講じることが、努力義務ではなく「義務」として医療機関に課されています。医師の健康を守るための具体的な対策が、法的に求められているのです。

大学病院は、高度医療、最先端研究、次世代育成という三重の使命を負っており、医師、特に若手から中堅層は、自己研鑽の時間も捻出しながら膨大な業務に取り組んできました。働き方改革は、この構造に直接影響を与えています。施行後1年を経た現在、タスクシフト/シェアやICT導入による効率化が進む一方で、「時間内では業務が終わらない」「研究・教育時間の確保が困難」といった課題や、厳格な時間管理へのプレッシャーも依然として存在します。質の高い医療・研究・教育を維持しつつ、医師の労働環境をいかに改善するか、大学病院は継続的な努力を求められています。


働き方改革は医師の「兼業」にどう影響するか?

このような改革の流れの中で、大学病院医師の「兼業」はどのように変化しているのでしょうか。

1.なぜ医師は兼業を選ぶのか?その動機と実態

大学病院に常勤する医師の多くが兼業を行っていることは、以前から指摘されてきました。ある調査によれば、大学病院常勤医の9割以上が何らかの形で兼業に従事しているとのデータもあります。その動機は多様ですが、経済的な理由が大きいことは事実です。特に若手医師にとっては、大学病院からの給与だけでは都市部での生活や将来設計に十分でない場合が多く、兼業収入が生活を支える上で不可欠となっています。また、別の調査では、大学病院勤務医の年収中央値に対し、アルバイトなどの兼業収入を含めると、その中央値が約1700万円にまで増加するという結果も示されており、兼業が医師の経済基盤に与える影響の大きさがうかがえます。

しかし、理由は経済面だけではありません。専門医資格の維持や最新手技の習得、大学病院では経験できない症例への対応など、スキルアップを目的とする兼業も重要です。さらに、研究費の確保、将来の開業に向けた経験蓄積、地域医療への貢献、人脈形成など、キャリアプランや個人の価値観に基づいた多様な動機が存在します。

なお、全ての医師が自由に兼業できるわけではありません。臨床研修医については、臨床研修に専念すべきとの考えから、臨床研修に関する省令でアルバイト(兼業)が原則禁止されています。また、国立病院機構や公立病院などに勤務する公務員医師は、国家公務員法や地方公務員法に基づき、兼業には所属長の許可が必要であり、一定の制限が課せられています。

2.制度変更がもたらす兼業への具体的な影響

働き方改革による制度変更は、こうした医師の兼業活動に具体的な影響を及ぼしています。

  • 労働時間通算ルールの厳格化:
    最も大きな影響は、本業と兼業先の労働時間を通算して上限規制を適用するルールの厳格化です。例えば、大学病院で週40時間働き、さらに兼業先で週20時間(年間約1000時間)働いている医師は、年間の時間外労働が上限(960時間または1860時間)を超過するリスクに直面します。病院側は、これまで以上に医師の総労働時間を正確に把握・管理する必要に迫られ、兼業の許可基準や手続きが厳格化される傾向にあります。

  • 勤務間インターバル規制の影響:
    連続勤務時間を制限し、次の勤務までに一定の休息時間(努力義務として9時間、B/C水準では義務)を確保する勤務間インターバル規制も、兼業のパターンに影響します。例えば、大学病院での当直明けに、そのまま兼業先で午前中の外来診療を行うといった働き方は、インターバル規制に抵触する可能性があり、見直しが必要となるケースが出ています。

  • 宿日直許可基準の厳格化:
    医師の宿日直については、十分な睡眠が確保できるなど特定の条件下で労働時間規制の適用が除外されますが、その許可基準が厳格に運用されるようになっています。これにより、これまで宿日直として扱われていた業務が時間外労働と見なされるケースが増え、結果的に兼業に充てられる時間が減少したり、特定の夜間・休日兼業が難しくなったりする影響が考えられます。


場から聞こえる声(例)

施行から1年、現場では戸惑いや新たな課題認識が生まれています。ある外科医は「手術の延長や緊急対応で本業の労働時間が読めない中、兼業先との調整が非常に難しくなった。上限を超えないように、泣く泣く兼業を減らさざるを得ない」と話します。研究を重視する内科医は「兼業収入が減ることで研究費の確保が厳しくなった。大学からの研究支援も十分とは言えず、研究活動の継続自体が難しくなるのでは」と懸念を示します。

管理者側も、「医師からの自己申告だけでは、兼業先での正確な労働時間把握には限界がある。しかし、プライバシーの問題もあり、どこまで介入すべきか判断が難しい」「上限管理は必須だが、医師のモチベーション維持や、地域医療への影響も考えると、一律に兼業を制限するのは現実的ではない」といったジレンマを抱えています。「コンプライアンス遵守は当然だが、そのための管理コストや手間が増大している」という声も少なくありません。


大学病院における兼業管理の課題とコンプライアンス

働き方改革時代において、大学病院における兼業管理は、コンプライアンス遵守と組織運営の両面から、極めて重要な経営課題となっています。

1.見えにくい「総労働時間」:兼業管理の核心的課題

最大の課題は、兼業先を含めた医師の「総労働時間」を正確かつ客観的に把握することの難しさです。自己申告に依存する方法では、意図しない誤りや申告漏れのリスクを完全には排除できません。特に複数の兼業先を持つ医師の場合、管理はさらに複雑化します。この「見えにくさ」が、適正な労務管理やコンプライアンス遵守の大きな障壁となっています。

2.求められる兼業ルールの明確化と運用の徹底

この課題に対応するためには、まず、大学病院として兼業に関する明確なルールを策定し、それを組織全体で共有・徹底することが不可欠です。兼業許可の基準、申請・承認プロセス、労働時間の報告方法、上限超過を防ぐための具体的な手順などを具体的に定め、全医師に周知する必要があります。ルールの形骸化を防ぎ、公平性と透明性をもって運用することが求められます。

遵守すべき法令とガイドライン、そして情報源の重要性

兼業管理においては、労働基準法、医師法、そして厚生労働省が示す「副業・兼業の促進に関するガイドライン」など、関連する法令や指針を正しく理解し、遵守することが大前提です。これらの情報を常にアップデートし、適切な管理体制を構築・維持するためには、厚生労働省のウェブサイトで公開されている関連資料やQ&A、働き方改革に関する信頼できるニュース記事、医師の兼業に関する調査データなどを継続的に参照することが極めて重要です。不適切な管理は、法的リスク(未払い残業代請求、行政指導、罰則など)や、医師の健康問題、ひいては医療安全に関わる重大な問題に発展しかねません。



課題解決への糸口:効率化と適切な管理体制の構築に向けて

これらの複雑な課題に対し、大学病院はどのように取り組むべきでしょうか。解決の方向性は、業務効率化と管理体制の適正化にあります。

まず、本業である大学病院内の業務効率化を徹底し、医師の労働時間そのものを削減する取り組みが基本です。タスクシフト/シェアを加速させ、医師事務作業補助者や特定行為研修を修了した看護師など、他職種との連携を強化します。チーム医療体制を最適化し、特定の医師への業務集中を防ぐことも重要です。

次に、ICTツールの積極的な活用が鍵となります。電子カルテシステムの最適化(テンプレート機能の充実、入力補助機能の強化)、院内・院外連携を円滑にするコミュニケーションツール(セキュアなチャットツール、院内SNS)、そしてAI技術の活用(画像診断補助、最新論文の効率的な検索、音声入力による診療記録作成支援など)は、医師が診療や研究といったコア業務に集中できる環境整備に貢献します。

そして、兼業管理の核心的課題である労働時間把握に対しては、テクノロジーを活用した仕組みの導入が有効です。具体的には、ICカードやスマートフォンアプリなどを利用した勤怠管理システムを導入し、大学病院内だけでなく、可能であれば兼業先での労働時間も記録・管理できる仕組みを構築することが求められます。これにより、自己申告の負担や不正確さを軽減し、客観的なデータに基づいた管理が可能となります。同時に、何が労働時間にあたり何が自己研鑽などの非労働時間にあたるのか、その区分を明確化し、医師に周知徹底することも混乱を防ぎ、正確な時間管理を行う上で極めて重要です。



まとめ

医師の働き方改革は、大学病院における医師の「兼業」について、その意義と運用方法を根本から見直すことを迫っています。施行から1年が経過し、労働時間管理の厳格化、コンプライアンス遵守の必要性が高まる中で、多くの課題が顕在化しています。

しかし、これらの課題は適切な対策を講じることで乗り越えることが可能です。業務効率化の推進、ICTの戦略的活用、そして何よりも、兼業を含む総労働時間を正確に把握・管理するための明確なルールと、それを支える客観的な勤怠管理システムの構築。これらを両輪で進めることにより、大学病院は医師の多様な働き方を尊重し、その能力を最大限に引き出しながら法令を遵守し、質の高い医療・研究・教育を提供するという使命を果たし続けることができるはずです。

特に、複雑化する医師の勤務形態に対応するためには、労働時間の正確な把握が全ての基本となります。これにより、サービス残業の抑止や医師の健康確保につながるだけでなく、勤怠データの自動集計や申請・承認フローの電子化による管理部門の業務効率化、さらには時間外労働の上限超過アラート機能などによるコンプライアンス遵守の徹底が実現します。このような課題解決に貢献する手段として、兼業・副業の申請から承認、日々の労働時間の記録・集計までを一元的に管理できる勤怠管理システムの導入は、今後の大学病院運営において、ますますその重要性を増していくと考えられます。


Dr.JOYの勤怠管理のご紹介

医師の働き方改革に対応!
医療業界に特化した勤怠管理システム

この記事をシェアする

ホーム医師の働き方改革

【管理者・DX担当者向け】働き方改革下の...