はじめに
夜間医療は、昼間と比べて急性期の患者が来院するリスクが高く、医療スタッフにかかる負荷も大きい現場です。実際、厚生労働省の資料や各病院の報告では、夜間や休日に起こる急変事例は年々増加傾向にあるとされています。高齢化社会の進行も相まって、体調の変化が多い患者への緊急対応が求められるケースは珍しくありません。
こうした現場を支える勤務形態として「オンコール」と「宿直」という2つのシステムがあります。オンコールは院外から呼び出しを受けるスタイル、宿直は院内に滞在して夜間対応を行うスタイルですが、どちらも医療現場を下支えする重要な役割を果たしています。
本記事では、このオンコール体制と宿直の違い、そして夜間医療現場が抱えている課題について詳しく見ていきましょう。
夜間医療を支えるオンコールと宿直の基礎知識
1.オンコールと宿直の定義と主な違い
オンコールは、日本語では「呼び出し待機」と呼ばれることがあります。医師や看護師、場合によっては検査技師などの専門スタッフが、病院に常駐していない状態で緊急連絡を待ち、必要に応じて出勤する勤務形態です。急変や救急搬送があった際にはすぐに呼び出しを受け、対応が求められます。
一方、宿直は院内に滞在しながら夜間業務を直接担当する形態であり、患者の急変やナースコールに即時に対応できる強みを持っています。
両者を使い分ける背景には、医療施設ごとの規模や診療科の特性があります。例えば、救急指定病院のように夜間の患者受け入れが頻繁な施設では、常駐スタッフとしての宿直が多く配置される傾向があります。
一方、特定の専門医しか対応できない病態が稀に発生するような施設では、常に専門医を院内に待機させるのはコストや人員の面で難しいため、オンコールで対応していることもあります。
2.夜間医療の現状
夜間医療の役割は、救急患者の受け入れ、入院患者のモニタリング、緊急手術、重症患者の集中治療など、多岐にわたる医療サービスを提供しています。医療の高度化に伴い、夜間であっても専門的な処置や検査が必要になるケースが増えています。たとえば、脳卒中や心筋梗塞などは、時間との勝負が大きく治療成績を左右します。迅速な判断と行動が欠かせない中で、夜間帯における人手不足は深刻な課題として現場にのしかかっているのです。
また、高齢化によって複数の持病を抱えた患者が増え、夜間に具合が悪化して来院される方が少なくありません。夜間専任スタッフを十分に確保できない病院では、昼間に外来や手術を担当していた医師や看護師が引き続き宿直やオンコールを行うケースが一般的です。その結果、長時間労働や連続勤務による疲労が蓄積し、医療事故やヒヤリハットのリスクが高まる懸念も指摘されています。

現場で起きている課題
1.人員不足と働き方の問題
多くの医療機関が、夜間帯の診療に充てる十分な人員を確保できていないと感じているようです。特に地方の中小病院や診療所では、限られた人数で複数の診療科をカバーしなければならない場合があり、その中で夜間のオンコール・宿直を回すのは大きな負担です。夜間の患者対応は、救急患者だけでなく病棟管理やナースコール対応など、多岐にわたります。
結果的に、一人ひとりのスタッフにかかる負担が大きくなり、疲労から来る医療の質低下を招くことが危惧されています。
また、働き方改革の一環として労働時間に制限がかかる中、医療はどうしても24時間365日の対応が求められるため、他業種と同じように勤務時間を削減するのは難しい事情があります。医師や看護師のワークライフバランスを尊重しながら、夜間診療のニーズにも応えなければならないジレンマが、現場にのしかかっているといえるでしょう。
2.患者ケアと安全確保
夜間はスタッフ数が少ないことに加え、疲労が蓄積している状態で緊急対応を迫られることが多いです。例えば、集中治療室(ICU)や高度急性期病棟を設置している施設では、常に重症患者が入院しているため、夜間でも容態の変化に合わせた医療処置を行わなければなりません。
にもかかわらず、人員配置が十分でない場合、患者対応や緊急処置がスムーズに回らず、処置の遅れやヒューマンエラーが発生するリスクが高まります。
さらに、夜間帯の受診は患者自身も不安を抱えやすい状況です。特に高齢の方や慢性疾患を持つ方にとっては、夜間に急変した場合のストレスや緊急手術の可能性は大きな負担になります。そうした患者に対し、十分な説明やケアを行うためにも、適切なスタッフ配置と連携が重要です。
3.コミュニケーションロスと情報共有不足
医療の現場はチームワークによって支えられていますが、夜間は日勤帯のスタッフが少なく、部署間の連携が日中よりも弱まりやすいと言われます。日勤から夜勤への引き継ぎが不十分な場合、患者の治療方針や状態変化を夜勤帯のスタッフが知らずに過ごしてしまうリスクもあります。
また、夜間に起きた出来事や検査結果を日勤帯に正しく共有できないと、患者にとって望ましい治療計画が遅れたり、あるいは見落としが生じたりする可能性があります。
こうしたコミュニケーションロスは、医療安全を損なうだけでなく、スタッフ同士の信頼関係やモチベーションを下げる一因になることもあります。夜間帯こそ、ICTを活用した情報共有システムや、チーム内での細やかな連携が重要なのではないでしょうか。

課題解決に向けた取り組み
近年、働き方改革が社会全体で叫ばれる中、医療現場でも夜間勤務体制の再検討が進んでいます。病院によっては夜間帯のスタッフを増員する代わりに日中を少し手薄にする工夫や、オンコール担当を専門領域ごとに複数人体制にして負担を分散するといった具体的な施策を打ち出しているところもあります。
また、夜間勤務のストレスを和らげるための環境整備も重要です。仮眠室やリラックススペースを充実させる、あるいは短時間勤務の交代制を導入して拘束時間を減らす試みなど、スタッフのコンディションを保つための取り組みが少しずつ広がっています。
さらに、ICT(情報通信技術)の活用が注目を集めていることも見逃せません。オンラインでの迅速なコミュニケーションツールや、遠隔モニタリングシステム、電子カルテとの連動などを活用することで、夜間帯の情報共有をスムーズにし、リスクを低減する動きが見られます。
これらのツールを導入する際にはコストや運用面でのハードルがあるものの、長期的に見ると医療の質とスタッフの働きやすさの両方を向上させる可能性が大きいと感じます。

まとめ
夜間医療は、予測不能な事態に迅速かつ的確に対応するための体制づくりが必須ですが、人員不足やスタッフの疲労、コミュニケーションロスなど、さまざまな問題が潜んでいます。オンコールと宿直という勤務形態は、いずれも現場を支える重要な仕組みである一方で、それぞれの課題を的確に把握して改善していく必要があるでしょう。
今後は、さらなる働き方改革の推進やICTツールの活用によって、夜間医療における患者の安全確保と医療従事者の負荷軽減がいっそう進むことが期待されます。現場の困難を一つずつ解消しながら、スタッフが安心して働ける環境を整えることが、医療の質を高めるうえでも大切だと思います。
もし、夜間勤務管理やスタッフ連携をよりスムーズに行いたいとお考えの方は、最新のシステムやサービスを活用することを検討してみてはいかがでしょうか。
たとえば、オンラインでの当直管理やオンコール呼び出し機能が充実したシステムを導入すれば、連絡の行き違いを減らせるだけでなく、負担の偏りも可視化しやすくなるはずです。
また、Dr.JOYでも医療現場で働く方々に向けた勤務管理システムのほか、コミュニケーションツールを多数提供しています。より具体的な改善策のイメージをつかんでいただくために、是非以下リンクをご覧ください。
夜間医療が抱える課題を乗り越え、患者にもスタッフにも安心・安全な環境を実現していくために、まずはできるところから取り組みを始めてみましょう。

Dr.JOY株式会社ビーコン事業部 カスタマーサクセス
鈴木
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