- はじめに
- 大規模病院での実態:労務管理者が抱えがちな典型シーン
- 1. 繁忙科と閑散科の差が激しく、シフト調整が難航
- 2. 医師からの「時間外勤務上限を超えそう」「人手不足」の相談が頻発
- 3. 多職種連携やタスクシフトが進まず、結局医師に業務が集中
- 働き方改革関連法の概要:医師残業をめぐる最新動向
- 1. 36協定の上限規制と医師特例
- 2. 残業上限超過による罰則やリスク
- 3. 労務管理者が見落としがちな法的ポイント
- 残業を抑えるための具体策:病院全体で取り組むべきポイント
- 1. 業務効率化とタスクシフトの具体例
- 2. 医師の働き方を変えるシフト管理術
- 3. メンタルヘルス対策とサポート体制の重要性
- 成功事例紹介:働き方改革を進めた大規模病院の事例
- 1. チーム医療を推進したA病院のケース
- 2. ICTをフル活用して診療効率を上げたB病院のケース
- まとめ
はじめに
医療現場の働き方改革が叫ばれて久しいですが、実際には「医師の残業が逆に増えている」という声も少なくありません。特に大規模病院では診療科や職種が多岐にわたり、シフト管理が複雑化しやすいため、労務管理者の方々が頭を抱えるケースが増えているように感じます。
もし医師の残業問題を放置すれば、過重労働による健康被害やモチベーションの低下が顕在化し、病院全体の信用や経営にも大きな影響を及ぼしかねません。この記事では、2024年4月から医師にも適用された時間外労働の上限規制を踏まえながら、大規模病院における医師残業をめぐるリスクと対策を整理してみたいと思います。ご自身の病院の現状と照らし合わせながら、ぜひ労務管理に活かしていただければ幸いです。
大規模病院での実態:労務管理者が抱えがちな典型シーン
1. 繁忙科と閑散科の差が激しく、シフト調整が難航
大規模病院では、内科や救急科などは常に患者数が多く、医師の残業が常態化しやすい一方で、比較的余裕のある診療科との間で負担バランスに偏りが生まれがちです。シフトを見直そうとしても「担当医の専門性が違う」「カルテやシステムの使い方が科によって異なる」といった理由で調整が進まず、結局は繁忙科の医師だけが疲弊しがちで離職やメンタル不調のリスクが高まるケースも珍しくありません。
2. 医師からの「時間外勤務上限を超えそう」「人手不足」の相談が頻発
働き方改革関連法による医師の時間外労働上限規制が2024年4月1日から適用されたことを受け、「このままでは上限を超過してしまう」という声が医師側から直接労務管理者に寄せられるケースも増えています。
特に休日や夜間のオンコール対応が重なると、想定外に時間外勤務が膨れ上がり、管理部門と現場の双方で判断が難しい局面に直面しがちです。
3. 多職種連携やタスクシフトが進まず、結局医師に業務が集中
看護師や医療事務、薬剤師など多職種を巻き込んだチーム医療で業務を分担し、医師の負担を軽減するのが理想とされています。
しかし、現場の人手不足や「医師が最終責任を負う」構造的な問題などから、タスクシフトが進まずに医師の残業が増える状況が続いている病院もあります。こうした問題が常態化すると労務管理者としては毎月の時間外勤務実績を見ながら、どう改善に着手すればいいのか迷いが募るばかりです。

働き方改革関連法の概要:医師残業をめぐる最新動向
1. 36協定の上限規制と医師特例
働き方改革関連法によって、労働基準法上の36協定で認められる時間外労働の上限が厳格化され、医師にも2024年4月から適用されました。原則として年960時間(月100時間未満)が上限となりますが、都道府県から指定を受けた一部の病院では特例として年1860時間まで認められるケースがあります。
とはいえ、すべての施設が対象ではなく、あくまで地域医療や救急医療を担う特定の医療機関に限定される点には注意が必要です。
2. 残業上限超過による罰則やリスク
もし残業時間が法で定める上限を超えてしまうと、労働基準監督署からの是正勧告や罰則の対象となる(病院側=使用者に対して)可能性があります。
さらに、大規模病院は地域医療の中核を担う存在であり、社会的影響も甚大です。メディア報道などを通じて病院名が表面化すれば、経営面だけでなく採用にも悪影響を及ぼしかねません。信頼低下が招くダメージを回復するには多大な労力と時間がかかるため、早めの対処が望まれます。
3. 労務管理者が見落としがちな法的ポイント
働き方改革関連法の適用範囲や書類管理、届出などは意外と複雑で、実務が多岐にわたる大規模病院ほどミスが起こりやすい傾向があります。
とくに「研修や学会出張は労働時間に含まれるのか」「医師の自己学習と勤務時間の境界はどうなるか」といったグレーゾーンで混乱が生じやすいことも。現場の声を丁寧に拾いながら、正しい解釈と運用を行う重要性が増しています。

残業を抑えるための具体策:病院全体で取り組むべきポイント
1. 業務効率化とタスクシフトの具体例
医師の長時間労働を削減する第一歩として、日常業務の洗い出しが欠かせません。カルテ入力や診断書作成などは、事務スタッフやクラークが補助することで医師の作業量を軽減できます。
電子カルテや音声入力システムの活用により、二重入力や書類作成の手間を省く工夫も効果的です。近年は「医師にしかできない業務」を絞り込み、他職種へ業務を移管(タスクシフト)または共同で対応(タスクシェア)する取り組みが政策的にも推進されています。
2. 医師の働き方を変えるシフト管理術
診療科の垣根を超えたローテーションや夜勤の分散化を図る方法など、柔軟なシフト管理を導入する病院も増えています。
ただし専門性の違いや患者の要望を十分に考慮しなければならないため、各診療科や看護部門、事務部門から代表者を集めてシフト調整委員会を設置するのが望ましいでしょう。固定的な勤務形態に捉われず、現場と相談しながらカスタマイズを進める姿勢が求められます。
3. メンタルヘルス対策とサポート体制の重要性
いくら残業時間を減らしても、職場の人間関係や業務の負担が医師のメンタル面に影響を与え続けるようでは、本質的な改善にはつながりにくいでしょう。
定期的な健康診断や、メンタル面のサポートを充実させるためにカウンセリングを導入するなど、相談しやすい体制を整えておくと安心です。大規模病院だからこそ、多職種との連携を深めることで早期にトラブルを発見・解決できるようになります。

成功事例紹介:働き方改革を進めた大規模病院の事例
1. チーム医療を推進したA病院のケース
A病院は、医師・看護師・薬剤師・事務スタッフなど多職種が週に一度集まって「情報共有会議」を実施し、各職種の業務負担や問題点を共有する取り組みを続けています。そこから「どのタスクを誰が担当できるか」を検討し、業務の属人化や二重作業を改善していきました。その結果、半年ほどで医師の残業時間が平均20%近く削減。小さな問題に気づいてすぐ対処できる環境が整ったことが成功の鍵だったようです。
2. ICTをフル活用して診療効率を上げたB病院のケース
B病院では、電子カルテと遠隔連携システムを全面的に導入し、カルテの二重入力や不必要な書類作成が大幅に削減されました。導入初期は研修や運用ルールの整備が必要で一時的に現場に負担がかかったものの、最終的には医師が行うべきコア業務に集中しやすい環境に変わり、残業時間が目に見えて減少したといいます。ICT導入の費用対効果がはっきりと示された好事例と言えるでしょう。
まとめ
医師の残業問題は、労務管理者だけが抱える課題ではなく、病院全体で取り組むべき重要なテーマです。2024年4月から医師にも適用された新たな時間外労働上限規制を遵守するためにも、医師の負担軽減や患者満足度向上、ひいては病院経営の安定化を図る意味でも、組織横断的なアプローチが求められます。
実際の勤務状況を正確に把握し、問題が生じる前に手を打つには、勤怠管理システムの活用が効果的です。たとえば医療現場の働き方改革をサポートするDr.JOYの勤怠管理なら、複雑なシフト管理や当直・オンコール対応の可視化、法定労働時間の自動集計などが可能です。こうしたツールを活用すれば、時間外労働の増加を早期にキャッチし、組織全体で対策を立てやすくなるでしょう。
いま、医師の残業問題に対処することは、将来にわたって医師がやりがいを持って働き続けられる環境をつくる第一歩とも言えます。この記事が、大規模病院の労務管理者として取り組むべき方策のヒントになれば幸いです。院内の現状を見直し、適切なツールや制度を導入しながら、継続的に改善を進めていただければと思います。

Dr.JOY株式会社ビーコン事業部 カスタマーサクセス
彩名
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