働き方改革で揺れる医師派遣、病院の現状と課題 

2026/2/13

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はじめに

日本の医療現場では長らく、医師不足や地域格差を補うための手段として「医師派遣」が機能してきました。しかし、近年進む働き方改革によって勤務医の労働時間規制が厳格化され、派遣医師を維持することへの負担が増大している病院も少なくありません。実際に「このまま医師派遣を続けるべきか、いっそやめてしまうか」で揺れる病院も増えてきているようです。

本記事では、働き方改革が及ぼす医師派遣への影響と、今まさに変わりつつある病院の現状と課題を多角的に掘り下げてみたいと思います。医療機関の管理職・DX推進担当者・IT部門の方々はもちろん、病院経営に携わる皆さまにもお役立ていただける情報をお届けできれば幸いです。


働き方改革が突きつける医療現場の新たな選択

1.医師の働き方改革とは何か

働き方改革とは、厚生労働省が推進する労働条件見直しの一環であり、医療現場にも大きな波紋を広げています。主なポイントとしては「時間外労働の上限規制」や「医師の健康管理の徹底」などが挙げられます。
2024年4月からは、基本として年間960時間(A水準)が上限となりましたが、救急医療などを担う特定機関に限っては1860時間(B水準等の特例水準)まで拡大できる特例措置も設けられています。
このように、長時間労働が常態化しやすい病院勤務において、時間外労働の上限がより厳格に設定されるため、各病院は医師のシフト編成や労務管理を大きく見直す必要に迫られています。

一方で、病院経営の観点では「医師を増やさなければ診療体制が維持できない」という現実が厳然としてあります。医師の採用を積極的に行いたくても、医師不足のエリアではそもそも常勤医が集まりにくい。そのため、これまで頼りにしてきた“派遣医師”に対して、労働時間管理の厳格化をどう適用するかが大きな課題となっています。

2.医師派遣へのインパクト

派遣医師は、病院が直接雇用する常勤医とは異なる契約形態で勤務します。そのため、時間外労働や休日勤務の取り扱いを病院がコントロールしづらい面があります。従来は「派遣元」と「派遣先」の病院間で上手くやりとりし、必要な診療科に専門性を持つ医師を送ることで地域の医療を支えてきました。

しかし働き方改革が本格化すると、派遣医師自身の労働時間管理もより厳格に行われるようになります。結果として、「以前のように柔軟に対応してもらえない」「コストが増大する」「派遣依頼を出すのが難しくなる」という声が病院サイドから上がり始めているのです。また、派遣元としても医師に過度の負担がかかる派遣先は避けたいという思惑があり、双方の調整が難航しているケースも珍しくありません。


地域医療を支えてきた「医師派遣」は本当に不要になるのか

1.深刻化する医師不足と地域医療への打撃

医師派遣は、大学病院などから医師を一定期間受け入れる仕組みとして、特に地方の医師不足を補ううえで大きな役割を果たしてきました。へき地や中小規模の病院では常勤医を十分に確保するのが難しく、派遣医師なしでは外来や病棟の維持ができないこともあるほどです。

しかし、働き方改革の影響が広がるにつれ、派遣を利用してまで診療を継続するかどうかを再考する病院も出てきています。なぜなら、派遣医師の労働時間が制限されれば、週末や夜間帯の当直などを頼みにくくなるからです。結果的に「当直やオンコール体制が組めず、診療科を休診せざるを得ない」といったリスクが高まり、地域医療そのものが縮小していく可能性も懸念されています。

2.働き方改革による医師確保の難しさ

働き方改革は常勤医の労働時間にも当然影響を及ぼします。各病院が自院の医師の時間外労働を削減しようとすると、シフトを組むためにより多くの医師を抱える必要が出てきます。医師全体の数に限界があるなか、都市部や大規模病院が積極的に優秀な医師を採用すると、地方や小規模病院にはなかなか人材が回ってきません。

さらに、求人募集で条件を良くしても、周辺インフラや教育環境が不十分な地域には医師がなかなか集まらない現実があります。結果として「派遣医師に頼るしかない」という構図が続いてしまうわけですが、ここでも働き方改革による規制が足かせとなり、思うように派遣医師を確保できない状況が生まれつつあります。


「やめる? 続ける?」医師派遣をめぐる病院の苦悩

1.派遣取りやめの声—宿日直許可未取得施設

働き方改革に伴う時間外労働上限規制では、本務先の派遣元病院だけでなく派遣先病院での労働も通算して労働時間の管理が必要です。「宿日直許可」を取得していない派遣先で夜間や休日の労働が行われると、時間外労働が上限に達してしまうリスクがあります。

そのため、「宿日直許可を得ていない医療機関へは医師派遣を控えたほうがいいのではないか」と考える病院もあるようです。しかし先述の通り、へき地や中小規模の病院では派遣医師なしでは外来や病棟の維持ができないケースもあり、「働き方改革」と「地域医療の確保」の両立には大きな負担が強いられているのが事実です。

2.組織改革と業務分担の見直し

派遣を受け入れるにしてもやめるにしても、病院全体の業務や診療科の連携を見直すことが急務です。例えば「タスクシフト」や「チーム医療」など、医師一人ひとりの負担を削減する仕組みが整えば、派遣医師の労働時間を際限なく伸ばす必要がなくなります。
また、看護師や薬剤師、事務スタッフの役割を明確にし、それぞれが担う業務を適切に再配分することも重要です。派遣医師に頼りきりではなく、既存のスタッフ同士で連携し、負担を分散していく工夫が不可欠になってきています。


働き方改革と医師派遣を両立させるポイント

1.勤務シフトと診療時間の最適化

派遣医師の労働時間を適切に管理しながら診療体制を維持するには、シフト制や診療時間の最適化がカギを握ります。具体的には、外来の予約制強化や診療枠の見直しを行い、患者の来院ピークタイムと医師の勤務を上手く合わせることが重要です。

また、勤務時間外のオンコール体制を見直し、ICTを活用した情報共有(電子カルテや診療支援システムなど)により、当直中でも過度な負担がかからないように工夫すると良いでしょう。こうした取り組みを進めることで、「派遣医師は欲しいが、無理をさせたくない」と考える病院でも、条件をすり合わせしやすくなります。

2.DXで変わる医療現場の新たな可能性

働き方改革の波に乗せる形で、医療現場にもDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が進んでいます。たとえば遠隔医療やオンライン診療を活用すれば、派遣医師が現地に赴く回数を一部削減しつつ、患者やスタッフへのフォローが行える可能性が生まれます。

さらに、バーチャルカンファレンスを取り入れることで、遠隔地にいる医師が同時に症例検討や治療方針の協議に参加することも可能になります。これにより、医師派遣の頻度を下げながらも高度な医療連携を保つケースが増えてきています。働き方改革の制約をただ受け身に捉えるのではなく、デジタル技術を積極的に導入して「医師不足」や「移動負担」を解消していく発想が、これからの病院には求められているでしょう。


「副業・兼業」という選択肢がもたらす医師不足解決策

1.多様な働き方の受け皿としてのメリット

医師の副業・兼業は以前より議論がありましたが、最近では働き方の多様化を背景に、より開かれた選択肢として捉えられるようになっています。週に数回だけ派遣先で診療する、非常勤として特定の専門領域のみ担当するといった形態は、医師個人のライフステージやキャリアプランに合わせやすいのが大きな特徴です。
病院側から見れば、「フルタイムの常勤医を確保しにくいが、一部の診療時間帯だけ医師を増員したい」という場合に、副業・兼業医師の力を借りることができます。特に急性期病院であっても、曜日や時間帯によって忙しさに差がある場合には、スポット的に医師を補充できるメリットは大きいでしょう。

2.働き方改革に適応した正確な労働時間管理

たとえば労務管理システムのなかには、兼業・副業時間も含めた「連続勤務時間」や「勤務間インターバル」の管理を一括して行える機能を提供しているものがあります。

例えばDr.JOYの兼業・副業機能では、兼業・副業など複数の勤務先にまたがる稼働状況を管理できる機能があります。こうした機能を活用すれば、副業・兼業で働く医師の働き方を把握しつつ、患者へのケアを手厚く維持することが可能になります。

特に地方や中小規模の病院では、常勤医を十分に確保できない事情があるため、「複数の病院を掛け持ちする医師を適切に迎え入れるためのデジタル基盤づくり」が急務といえるでしょう。

こうしたツールを活用することで、医師個人の働き方と病院側の労務管理を同時にサポートでき、働き方改革の規定内で副業や兼業を行えるよう調整が可能です。病院側も、医師の勤務状況を正しく把握していれば、過剰なシフトやオーバーワークを未然に防ぎやすくなり、働き方改革で課せられた上限規制への違反を回避できます。副業・兼業という柔軟な働き方と安全管理を両立するためには、こうしたシステム活用による正確な労働時間管理が欠かせないといえるでしょう。


まとめ

働き方改革による労働時間規制の強化は、医療現場を取り巻く構造そのものを変えつつあります。医師派遣がなければ回らない病院は多い反面、従来の形で派遣を継続するだけでは難しくなってきたのも事実です。単に「医師派遣をやめる・続ける」の二者択一を迫られるのではなく、組織改革や業務効率化、DXの導入、副業・兼業医師の活用といった多様なアプローチを組み合わせていく必要があります。

医師の負担を軽減しつつ患者へのケアを維持するには、病院全体のマネジメントや労働環境の見直しだけでなく、外部リソースの使い方も柔軟に工夫しなければなりません。多角的な取り組みを進めることで、働き方改革の“制約”を一つのチャンスと捉え、医療サービスの質をさらに高める道筋を見いだせるでしょう。

これから先、医療分野ではDXの加速や新たな働き方が次々と登場すると考えられます。その激動の時代に対応するためにも、「医師派遣」はただの負担増ではなく、病院の未来を切り拓く重要な選択肢として、もう一度見直してみる価値があるのではないでしょうか。


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