はじめに
医療現場では近年、長時間労働や人手不足が深刻化し、特に勤務医は外来診療、病棟管理、手術、当直、オンコール対応など、多岐にわたる業務を担当しています。こうした忙しさや人員配置の問題から、なかなか休暇を取得できずに疲労が蓄積してしまうケースも少なくありません。
このような状況を改善するため、2019年の労働基準法改正で「年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年5日以上の取得が義務化」されました。これは勤務医も例外ではなく、使用者(病院や医療法人など)は従業員が最低5日は有給を取れるようにしなければならないのです。
さらに、2024年4月からは医師の時間外労働に上限規制が導入されました。これは厚生労働省が進める「医師の働き方改革」の一環で、長時間労働を是正し、医師の健康と患者の安全を確保しようという動きです。過度な疲労は医療の質や安全に影響するため、従来以上に休暇の確保や労働時間管理が厳格に求められるようになります。

年5日有給休暇取得義務の概要
対象者
年間の有給休暇付与日数が10日以上ある労働者(パート・アルバイト含む)が対象
勤務医も当然該当し、使用者は医局の勤務形態やシフトにかかわらず、必ず有給を5日以上取得させなければなりません
取得方法
使用者は従業員の意向を踏まえて、時季指定権を行使し、従業員に有給を取得させる義務があります
従業員が自主的に取得した休暇の合計が5日以上に達しなかった場合は、使用者が不足分を指定して取得させる必要があります
罰則
この義務を怠った場合、使用者は罰金が科される可能性があります
年5日を「最低ライン」として確実に取得させるための措置であり、医療機関だからといって特例は認められません
年5日の取得義務だけでは不十分な理由
厚生労働省が示す年5日取得義務は、あくまでも最低限の確保を目的としています。実際には医療の現場で高水準のケアを継続するには、勤務医の心身の健康維持が欠かせません。十分な休息が得られず疲弊した状態では、診療の質や患者対応に影響が及ぶリスクが高まります。
また、医師不足が依然として深刻な地域や診療科もあるため、個々の勤務医が頑張り続けるだけでは解決できない構造的な課題も存在します。そこで注目されているのが、2024年4月に施行された医師の時間外労働上限規制です。これは法的拘束力をもって労働時間を制限し、医師が過度な残業に追われず、休息をしっかり確保できるようにすることを目指しています。
勤務医特有の休暇取得を妨げる要因
1.シフトの複雑さ
外来診療、病棟管理、手術スケジュール、学会出張など、医療機関は多数の業務を同時並行で回しています。そのため、ひとりが休んだ場合に代替要員をどこから確保するかが難しく、有給を取りにくい雰囲気につながることがあります。
2.緊急対応が発生しやすい
医師の仕事は患者急変や重症化など、予期せぬ事態に対応する必要性が常につきまといます。オンコール対応や当直で呼び出されるかもしれないと思うと、「休暇を取るのは気が引ける」という心理が働きやすいのも事実です。
3.休暇管理の煩雑さ
勤怠やシフトを紙やエクセルで管理している医療機関もまだ多く、「誰がいつ休む予定か」がリアルタイムで確認できない場合があります。管理者や医師自身が全体像を把握しづらく、結果として取り損ねるケースが発生しやすくなります。

年5日取得義務を円滑に進めるポイント
1. 取得計画の早期策定
年度始めや異動時期に合わせて、一人ひとりの希望やスケジュールをヒアリングし、無理のない形で割り振る
厚生労働省のガイドラインでも「従業員の意向を踏まえて計画的に取得させること」が推奨されています
2. シフトの可視化・共有
紙やエクセルから卒業し、クラウド型シフト管理システムを導入することで、休暇希望や当直スケジュールをリアルタイムで共有が可能
取得漏れや取りこぼしを防ぐだけでなく、申請や承認フローの簡素化にもつながります
3. 代替要員の確保
同じ診療科や専門領域が近い医師同士で、緊急時の協力体制をあらかじめ決めておく
お互いに休みを取り合える雰囲気が醸成されれば、休暇申請の心理的ハードルが下がります
4. 組織のトップからのメッセージ
経営陣や管理職が「有給を取ることは大切」と繰り返し発信し、休暇取得を積極的に促す
厚生労働省の指導要領でも、使用者側のリーダーシップが休暇取得率向上のカギになると示されています
2024年4月からの医師時間外労働上限規制
厚生労働省「医師の働き方改革」に基づき、2024年4月からは医師の時間外労働が原則として月45時間、年360時間を上限とするルールが適用されました(※一部特例あり)。この規制は、医療現場が抱える慢性的な長時間労働を解消し、医師が疲弊しない体制を作ることを目的としています。
有給休暇の取得促進と併せて、時間外労働を抑制する取り組みが必要
これまで医師個人の献身やサービス残業に支えられてきた病院も、働き方改革に対応するための組織的な対策が求められます
勤務医の負担が減ることで、最終的には患者への医療サービスの質や安全性を高められると期待されています

有給休暇管理の効率化をサポートするシステム活用
医療機関では通常の企業とは違い、診療科やチーム単位でのシフト調整が複雑です。年5日の有給休暇取得義務を確実に履行するためには、負担なく休暇を管理できる仕組みの導入が効果的です。たとえば、以下のような機能を備えたクラウドサービスが役立ちます。
有給残数を自動カウントし、一覧で確認できる
誰がいつ休む予定かを、リアルタイムで確認できる
一定期間で休暇取得率が低い人がいれば、アラートや管理者への通知が自動で行われる
急な変更があっても、スマートフォンやPCで再申請が可能
▼有給管理を効率化したい方はこちら
https://service.drjoy.jp/feature/attendance
このようなシステムを活用することで、勤務医や管理者双方の負担を軽減し、休暇取得をサポートできます。
まとめ
「年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年5日以上を取得させる義務」は、法律で定められた最低限のラインにすぎません。医師が十分に休息を取れなければ、診療の質や患者の安全性にも影響します。多忙な勤務医が疲れ切ってしまわないよう、年5日はあくまで通過点と捉え、より積極的に休暇を取得する仕組みづくりを目指すことが大切です。
また、2024年4月からの医師時間外労働上限規制の施行によって、医療現場の働き方改革はさらに加速する見通しです。医療機関全体で業務効率化や人員配置の見直し、DXの導入などを進めることで、勤務医が休みやすい環境を整えることが求められています。
ぜひ、厚生労働省のガイドラインや関連法令を正しく理解したうえで、勤務医の働きやすさと医療の質向上の両面を実現する取り組みを推進してみてはいかがでしょうか。

Dr.JOY株式会社ビーコン事業部 カスタマーサクセス
彩名
このライターの記事一覧




